過ごす時間の長い会社では、仲のいい人に恋愛感情を持つのはよくあること。
社内恋愛についての考え方は人それぞれで、積極的な人もいれば「あえて避ける」という人もいます。
仕事と恋愛は別、のスタンスを見れば納得するしかないですが、一方で面倒なことを回避するためにそれを建前にする人も。
「社内恋愛はしない」と告白を断られた女性が見たある現実について、ご紹介します。
「社内恋愛はしない」振られてしまい…
保険会社に勤務する百合子さん(仮名/28歳)は、同じフロアの別の部署で働く男性のことが好きでした。
片想いは2年ほどで、それを知っている仲のいい同僚からは「転勤で出ていく前に告白しなよ」と言われていたそうです。
その男性とはよく飲みに行く社内のグループで親睦を深め、LINEのIDを交換して個人的な会話ができるくらいの距離感でした。
「たまに私のほうから業務のことで質問があるみたいな感じでメッセージを送っていて、気軽に返してくれるしそこからお互いの話もできるし、嫌われてはいないと思っていました。勇気がなくて恋愛については何も聞けなかったのですが、やっぱり確認するべきでしたね…」
そう百合子さんがため息をつくのは、何とか関係を進めたくて思い切って男性に告白したら、「社内恋愛はしない主義だから」と断られてしまったから。
社内恋愛の難しさは同僚たちともよく話すので、こういう人もいるのだと理解はできたといいます。
一方で、「何とも思っていない」など自分を否定する言葉がなかったことで、百合子さんは「少なくとも好きでいられるのは構わないのかな」と、気持ちを向け続けることに希望を持ったそうです。
矛盾する男性の姿
その後、この男性とは表面上はいままでと変わらず会話ができていて、会社の外でグループで飲むときもそれは変わらず、百合子さんは「嫌われているわけではない」とほっとしていたと言います。
「LINEでメッセージを送っても相変わらず返事はくれて、でもさすがに個人的なことは前ほど話題にはできなくなりました。それでも、私の気持ちを知っても避けられないだけましだと思っていたのですが…」
振られたとしても会社で顔を合わせねばらず、変に気まずい思いをしなくていいのは、百合子さんにとっては救いではありました。
ところが、そんなある日百合子さんの耳に飛び込んできたのは、この男性が同じ会社の別の女性と親しくしているという噂です。
「日曜日にデートしているのを見た」「退社後に近くで待ち合わせをして一緒に帰ってる」と、それを実際に見たという人から流れた情報は、百合子さんにとってはまさに寝耳に水でした。
「社内恋愛はしない主義だと言って、それを理由に私を振ったのに、どういうことなのかと混乱しましたね…」
それとなく見ていると、社内でも男性とその女性はたしかに以前より距離が近く、百合子さんとはまったく違う対応をしているのもわかりました。
「付き合っているのかな」と盛り上がるなか、あるひとりが実際に男性に確認したそうで、そのときは「そういう関係ではない」と、きっぱりと否定されたそうです。
それでも、ふたりの親密度が深くなっているのは誰が見ても明らか。
そんな話をしているとき、「◯◯さん、社内恋愛はしない主義って聞いたことがあるんだけどな」と、百合子さんはつい口にしてしまったそうです。
「建前」で逃げる人
「え、そうなんだ」とみんなは驚いたそうですが、ある同僚が「それって、建前だよね。私もそういう言い方で後輩からの告白を断ったことがあるよ」と言い、百合子さんは驚きます。
周りのみんなもうなずいていて、「何とも思ってない人から告白されて、その気はないって断って粘着とかされたら嫌だよね。社内恋愛はしない主義って言えば、向こうはどうしようもないもんね」と、あるひとりが言いました。
男性がそれを建前にして逃げた、とは思っていなかった百合子さんは、改めてショックを受け…。
「でも、それで断ったら自分に好きな人ができたときに困るんじゃ…」
困惑しながらそう言う百合子さんに、「そのときは『主義を曲げられるような人と出会った』とか、いくらでも言い訳はできるでしょ」と、同僚は返したそうです。
みんなの声を聞きながら百合子さんが手にしたのは、「自分は男性にとってそれくらい軽い存在なのだ」という、悲しい実感でした。
会社で恋することの難しさ
「そんな建前を使われるくらいなら、普通に何とも思っていないって言われるほうがよかったです」と、百合子さんは言います。
「社内恋愛はしない主義だから」と告白を断られたら、自分が好きでいることはいいのかと諦める踏ん切りがつかなくなる、というのはたしかにあると思います。
一方で、こんな建前で社内の人からの告白を断る気持ちを考えると、「だから自分を好きでいても無駄」「諦めてほしい」のサインでもあって、その後も付き合う可能性はないことを示しています。
社内恋愛の場合、告白がどんな終わりを迎えるにせよ「これからも顔を合わせる」という現実が続くため、意図しない人からの気持ちこそ、慎重にならざるを得ません。
誠実にお断りをしたとしても、相手によっては距離が近いばかりにその後も執着するなんてことは、実際にあること。
そのため、「相手を傷つけず刺激せず」の気持ちでこんな建前を使う人は、多いのではないでしょうか。
ですが、肝心の「好きじゃないから付き合えない」を避けて「No」と答えることは、百合子さんのように片思いに希望を持つその後を止められない場合もあり、相手の受け止め方しだいの難しさもあると言えます。
潔く諦めるのが自分のため
百合子さんがショックだったのは、自分を振って別の女性と恋愛関係になろうしている男性の姿ではなく、都合のいい建前を使って断るほど男性に興味を持たれない自分の現実でした。
「告白した後も普通に接してくれるのは、私に好かれていることなどどうでもいいってことなんだ、と思いました。好きでいることを許してくれている、なんて思っていた自分が馬鹿みたいです…」と百合子さんは肩を落としますが、社内恋愛はその後も相手との接触が続くため、こんなつらさを受け取ることがあります。
たとえば、その男性が自分以外の社内の女性とお付き合いを始めたなんてことになれば、自分は男性の建前を変えるような人間ではなかったと改めて知ることにもなり、二重の悲しみがありますよね。
気をつけたいのは、そんな自分を見て自信を失う必要はないということです。
その男性が、たまたまそんな断り方をする人だっただけであって、ほかの人もそうとは限りません。
嘘をつかれる自分を知ると魅力のなさに落ち込むのは当たり前ですが、極端に言えば相性が悪い証拠でもあり、自分の価値を否定されたと受け取るのは間違い。
人にはそれぞれ恋愛に対する考え方があり、そういう断り方をする人もいるのだ、と割り切るのが正解です。
社内恋愛では、トラブルを避けるために恋愛感情を向けてくる相手には慎重になる人が多く、建前を使うことが悪いとも決して言えません。
そんな相手を責めるのではなく、「自分とは合わなかったのだ」と過去として置き、新しい恋愛の可能性を探すのが自分のため。
つらい経験をしたことは、人を知るきっかけになったと割り切り、誰かを好きになれる自分に胸を張ることを忘れたくないですね。
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