死後離婚をすべきか、否か
今回は、妻が義両親の介護を続けるか否かの選択を迫られたとき、対照的な決断を下した2人の話を取り上げました。相反するエピソードをもとにチェックリストを作成したので、人生の岐路でどうすべきかの判断材料として参考にしてください。
1.すでに義両親の介護を始めているかどうか
これは、すでに妻が義両親の介護を担っている最中に夫が亡くなった場合。妻がこれから介護を続けたくないのなら代わりの人間に頼まなければなりませんが、夫の親戚筋もそれぞれの事情(子どもの教育にお金がかかるので経済的に無理、配偶者の親の面倒をみているので肉体的に無理、兄弟姉妹間の仲が悪かったので心理的に無理など)で説得できない可能性もあります。
一方、まだ義両親が元気で心身ともに丈夫なら「もし介護が必要になったら、誰が引き取るのか」をこれから親戚一同でゼロから話し合って決めていきます。
すでに夫が存命ではないのなら未亡人の妻が「義理の」両親を引き取るのは不自然なので、そこで「引き取らない」という結論を出せば、姻族関係終了届を出さずとも、義両親との関係を終わらせることができます。
2.義両親との仲はどうか
「義両親は夫側の人間。夫と仲が悪いのなら、義両親とも仲が悪い」と思われがちですが、必ずしもイコールとは限りませんよね。だから、夫への憎しみを義両親に転嫁するだろうと決めつけるのは早計です。
たとえば、義両親が夫(息子)より妻(嫁)の味方をしてくれる場合などは、義両親との関係は良好なことも多いです。このような場合は、妻は夫に先立たれても「最期まで義父(母)さんのお世話をしたい」と介護を買って出ることもあります。逆にいえば、夫だけでなく義両親とも険悪なら姻族関係終了届の提出も視野に入ってくるでしょう。
3.離婚検討中もしくは協議中かどうか
離婚検討中や協議中の「死別」はどちらに当てはまるのでしょうか。ところで、離婚したのに元妻が元夫の両親の世話をしているケースを私は聞いたことがありません。
「夫との離婚」が頭をよぎった時点で、妻のなかでは「夫の両親に尽くす」という気持ちは消え失せているのでしょう。これは離婚の理由が「夫の両親の介護拒否」でも、そうでなくても結果的には同じことです。
このように考えると離婚検討中や協議中に夫が亡くなった場合も、やはり妻は義両親の面倒を見るつもりはないでしょう。なぜなら、生前に夫と離婚が成立せず、検討中や協議中の段階にとどまっていたとしても、妻の心のなかでは「離婚したも同然」だからです。
そして離婚ではなく死別で夫を失ったとしても姻族関係終了届を提出し、義両親との関係を断ち切ることも視野に入ってきます。つまり、離婚検討中もしくは協議中の「死別」は、義両親の介護という点では離婚(=死後離婚のようなもの)と同じと考えていいでしょう。
4.過去に死後の対応について話し合ったことがあるか
「もし夫が亡くなったら、(義両親のことを含め)どのように暮らしていくか」を個別具体的に検討したことはありますか?
妻が前もって用意周到な準備…たとえば、法律などを調べたり、ほかの親戚に相談したり、自分の心を整理したりした結果、「夫が亡くなっても家に残る」「亡くなったら家を出る」の2択のうち、後者を選んだのなら、いざ夫が亡くなったとき、姻族関係終了届を躊躇せず提出することができるでしょう。
逆に何の準備もせず、その日をむかえた場合、夫亡き後の生活について考えたこともなく、ほかの親戚への根回しもせず、そもそも姻族関係終了届の存在すら知らなければすでに手遅れです。
なぜなら夫の逝去後、妻が何もいわずに義両親の世話を続けて時間が流れていくと、親戚一同のなかで「いまのままで」という暗黙の了解ができあがってしまい、いまさら「義父(母)さんのことなんですけど」とお伺いを立てるのは雰囲気的に難しいからです。
5.義両親を任せられる兄弟姉妹等がほかにいるかどうか
現在、夫の両親と衣食住を共にし、身の回りの世話や介護を妻が行っている状態で夫が亡くなった場合、義両親を引き取ってくれる夫の兄弟姉妹などはほかにいますか?
引き取り手がいないのに、実家に要介護の義両親を残して出ていくのは現実的に難しいです。もともと妻1人で義両親の世話をしていたのだから、「(夫が亡くなったので)1人で面倒をみるのは無理」と頼み込んだところで、ほかの親戚は「最後まで看取りなさいよ!」と門前払いが関の山。
ですが、一部には遺産目当てで妻を厄介払いすべく「あなた(妻)に任せられない!」と猫をかぶるケースもあります。
今回は、急増する「死後離婚」について、その一端をご紹介しました。もしあなたに何かあったら、パートナーはあなたの父や母の面倒を見てくれるという確信はありますか?
もし、ないという方や「死後離婚」について考えている方は、いま1度パートナーと話し合ってみてはいかがでしょうか。
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- source:厚生労働省 人口動態統計の年間推移,法務省 戸籍統計
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