亡き夫に義理立てする気にはならなかった
Yさんは思わぬ形で未亡人になり、27歳の娘さんと79歳の義母が残されました。Yさんの選択肢は2つです。
1つ目は、いままでの生活をこれからも続けるパターン。これは夫の実家で暮らし、義母の世話をし、義母の介護費用を含め、すべての費用を自分の収入から負担することです(夫はほとんど遺産を残しませんでした)。
2つ目は、いままでの生活をやめるパターン。夫の実家を出て、父親の世話を義弟に任せ、自分の収入や退職金、年金は自分のために使うことです。
28年間の結婚生活を振り返ったとき、夫に散々振り回されたこと。夫のことを義母はほとんど注意してくれなかったこと。何より悪しき思い出がつまった家のことを思い浮かべると、これ以上、亡き夫に義理立てする気にはなりませんでした。
Yさんは娘さんといっしょに実家を出て2人でアパートを借りて暮らし始め、そして役所に「姻族関係終了届」を提出し、夫の実家とは縁を切りました。Yさんは、当時の心境をこう振り返ります。
「いまは娘と自分のことだけを考えればいいので、とても楽になりました。いままではのんびりとテレビを見るヒマもなく、時間に追われて日々が過ぎていったので。娘も転職して収入を増やすため、資格試験の勉強に励んでいます。女同士、前向きですよ!」
もし、Yさんが「離婚」というかたちで事前に夫や義母と縁を切っていれば、夫の生活態度などを省みるに、慰謝料を手に入れることができたかもしれません。しかし生前に離婚することが叶わなかったため、死別に伴い「姻族関係終了届」というかたちを取らざるを得ませんでした。
はたから見ればYさんは結婚生活の28年間、夫と義母に使われるだけ使われたのに何も残らず、人生の大半を棒に振ったように思えますが、本人いわく必ずしも無駄ではなかったそう。
「いまの会社で定年まで働けることが私の誇りなんです!」Yさんは最後に、そう力強く語ってくれました。