気分はロングバケーション
―ご家族で「移住みたいなワーケーション」を開始した30代の加奈さん。どのようなスタイルで現在過ごされているのですか?
加奈:もともと東京に持ち家があるのですが、それをキープしつつ長年の夢であった「海の近くでの生活」を家族で開始しました。
2年くらいwithコロナ生活が続くと見越したのと、夫のリモートワークもしばらくは続く見込みが立ち、もし体制が変わったときには東京に戻ろうという考えにまとまったのが移住の契機ですね。
拠点が東京にあるので、感覚としては一家でロングバケーション、夫はリモートワークを活用して長期のワーケーション。そんな感じでいます。
―時代の流れを逆手に取り、これまでの生活を一変させたのですね。行動を起こす前に不安はなかったのですか?
加奈:まず家をふたつ持つことに不安はありました。でもこれはすぐに解消できました。アリサさんがおっしゃていたように、都内に比べて家賃が安く、家計への影響が少ないことがすぐにわかりました。
また、こちらの生活が本気で気に入ったら、東京の持ち家を賃貸や民泊にシフトすることも検討していて。そうなったときは不動産収入で住宅ローンの支払いを加味しても「あれ、プラスになるんじゃ?」という見解が出てきたのですよね。移住先の賃貸情報を事前に知ることで不安要素は排除できました。
一番ネックだったのは子どもの転校でした。親目線では、新型コロナ対策が万全でない状態で自主休講するお友達もいたので、「だったら、もう生徒の絶対数が少ない都会から離れた学校の方がソーシャルディスタンスも確保できて安心なんじゃないかな」という理論立てがありました。しかしそんな理屈は子どもには通用しません。
新天地でお友達ができるのか、なじめるのか…。娘は引っ込み思案な性格なので、精神を病まないかなって心配だったのです。私自身、アリサさんと同じ東京生まれ東京育ちなので、田舎特有のスクールライフの想像がつかず、何かあったときに子どもにうまくアドバイスや対処ができるのか…という不安もありました。
でもいざ箱を開けてみたら、新型コロナ以降の移住者の増加で、地元の少子化による小学校廃校問題が解決するほど転校生がいまして(笑)。
転校生に対するスポットライトの照量が低くなっているのと同時に、「友達大募集中です」人口が多くて、無事に娘はすんなり地元小学校のコミュニティになじめました。このタイミングでの転校の賜物だったのかもしれません。
―なるほど。同じ考えのファミリー層が想像以上に存在したのですね。教育に対して何かほかにメリットはありましたか?
加奈:子どもはやはり田舎の方が育てやすいです。3密を避けられるビーチやキャンプ場が近くにあるので、週末のレジャーにも困らないですし。近くでカブトムシが獲れたりと、生体に触ることができる環境がすぐ近くにあるのは、子どもの成長に大きな利点だと感じます。
あとこれは少し細かい例なのですが、こちらに住み始めて以降、わが家では子どもにおつかいを頼むようにしてみました。
おつかい先をいわゆる近所のおばちゃんが店に立つ野菜直売所など、「ザ・地元の商店」に指定しているのですが、都内での大手チェーンへのおつかいでは得られないコミュニケーションが直売所では発生するようで、帰ってくると買いもの体験以上の学びを培っていますね。社会性を学ぶ機会が減ったいま、非常によい環境にいるなと感じています。
さらに都内よりも地元コミュニティも確立していることから、地域の目もいい意味で光っている。そして交通量もさほど多くないので、親としては比較的安心して子どもをおつかいに出せます。