「悪いのは全部、私のせい」と思うのは…
さて、Aさんのように、親子の役割逆転の家庭環境で育った人は、
- すべて(特に悪いこと)は自分の責任だ
- とにかく自分のせいだ(自分が悪いんだ)
- そんな自分には罰を与えなければならない
といった、「罪悪感」や「過剰な義務感」を伴うセルフイメージを形成してしまっていることも少なくないようです。
たとえば、「他人の機嫌のよし悪し」のような、自分には全然関係のないことの責任まで請け負ってしまい、相手の機嫌を何とかしようと頑張ったりします。
ですが、いくら頑張ったからといって、何でもかんでもすべてが望む結果を生み出せるとは限りませんから、その結果、「不完全な自分が悪いんだ」などと、さらに自分に罰を与えるというネガティブサイクルにはまっていくのです。
こうしたネガティブサイクルのなかで頑張れば頑張るほど、「自分はどうしたいのか?」といった自分を大切にすることが置き去りにされてしまいます。
特に、親子の役割逆転家庭の場合は、親からあまりにも重たい役割を背負わされるわけですが、抵抗できずに期待を背負い続けているうちに、いつしか親からの身勝手な期待ではなく、「そもそも自分はこういう十字架を背負って生きる運命だ」といったように、親からの期待を「内面化」して自分のものとしてしまうことがあります。
言い換えるなら、「重たい十字架を背負っているのが自分らしい自分」というセルフイメージを形成するということです。
そして、「重たい十字架を背負うのが私らしさ」というセルフイメージを持っているため、たとえ大人になって毒親と物理的に距離を置いていたとしても、無自覚にセルフイメージの通りに思考し行動するようになり、「どうしていつも私だけ?」という悩ましい現実を繰り返すのです。
これって、本当に悲しく、悩ましいことです。
だって、誰かに命令されているわけでも指示されているわけでもないのに、なぜか反射的に「あらゆる責任を自分のせい」にして考え受け取ってしまうのですから…。