こんにちは。メンタルトレーナー&心理カウンセラーの吉田こうじです。大人になってもあなたを苦しめる『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』を連載しています。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
本記事内に登場する「毒親」とは
子どもに対する拒絶、侮蔑、無視、過干渉、虐待などによって、子どもの心身に罪悪感、劣等感、不安感。過剰な義務感、不足・欠乏感、羞恥心、無価値感などのネガティブな思考や感情を継続かつ執拗に植え付け、それによって子どもを「自分の所有物」かのようにコントロールする親のこと。また、「親」とは実の親のみならず、「親代わり」の身近な人も含めます。
甘えられない子どもの葛藤
今回は、あるクライアントさんのケースをお話しします。
Aさんの両親は学校の先生でした。Aさんは幼いころから共働きの両親の代わりに、幼い妹の面倒をみてきました。食事の世話、洗濯、部屋の掃除、ゴミ出しetc…。
Aさん曰く、「両親にはあまり会話がなく、どういう理由かはわかりませんが、私が小学生中学年くらいのころに母が鬱になり、仕事をやめて自宅にいるようになってからは、今度は妹のほかに母親の面倒も見なければならなくなりました」とのこと。
Aさんのように、本来なら親がやるべきことがすべて両肩にのしかかってくる家庭で育ち、基本的な欲求が満たされる機会がないと、「子どもらしい甘えの欲求」が満たされないという辛い現実を自分なりに咀嚼し受け入れるために、自ら「基本的な欲求は自分には必要ないもの」と思い込もうとすることがあります。このテーマでよく出てくる「心の防衛機制」ですね。
Aさんも、「自分には必要がないもの」「そう思うことはいけないこと」「欲張りなこと」「わがままなこと」「迷惑をかけること」「悪いこと」などと自分に言い聞かせることで、自分の素直な思いを自由に表現できない苦しみや悲しみを封じ込めていました。
そもそも小学生低学年のAさんが、学校に通いながら妹の面倒を見て、家事全般をすることは相当難易度が高いものです。大人だって、そうそう簡単なことではないですよね。
そのうえ、今度は母親の面倒も見ることになってしまった…。
やってもやっても、うまくいかないし、報われないし、キリがない現実を日々体験することで、いつしかAさんは、「諦め癖」「服従癖」「我慢癖」「頑張り癖」を身につけていきます。
また、その反動から、「私がこの家を守るんだ!」「私がこの家を支えているんだ!」という、自負心も育んでいきました。
辛く苦しい現実を諦め、服従することや、「家を守っている」という自尊心を持つことで心の痛みを守ろうとしたのです。
立派な親が、毒親だった…
当初Aさんは、そんな大変な家庭環境で育ってきたにもかかわらず、「父は仕事をしなければならなかったらしょうがない」「母もいろいろとあったのでしょう」などと強がっていました。
しかし、少しずつ自身の深い部分と向き合う中で、「本当は辛かった」「本当は嫌だった」「本当は友達と自由に遊びたかった」「本当は無慈悲で家庭を顧みない父親に頭に来ていた」「本当は無表情な母親が嫌いだった」などとボロボロと涙を流し、どんどん抑圧してきた本音を吐露し始めました。
「あのころは洗濯物を畳むのも大変で、何をやっても完璧にできない自分が本当に嫌で嫌で仕方ありませんでした」と泣きながら話すAさん…。
でもひとしきり話した最後に、「でも、よくよく考えてみたら、大人にも難しい家事や親の世話を小学生のころからしていたなんて、本当に自分はよくやってきたと思います。もしも幼いころの自分に会えるなら、思いっきり褒めて抱きしめてあげたいです」と、吹っ切れた表情をしながら笑顔で話してくれました。
Aさんも現在、学校の先生をしていて、Aさんの幼少期とかなり似通った家庭を持っているようで、「精一杯やっているのに、どうしてこうなるのかがわからない」という相談で僕のところにいらしたのです。
過去と向き合う中で、立派な親だと思っていた自分の両親が、実は相当な毒親だったことや、その毒親の影響に大人になったいまでも縛られ続けていたことに気づいたAさんは、その後、解決するべき自分の課題を設定し、現在もひとつひとつ着実に解決しながら自分の人生を取り戻しています。
このAさんのケースから、毒親の呪いの正体や抜け出すためのヒントなどいろいろなことが見えてきます。