LGBTQを肯定した報道は必ず削除
また、日常だけでなくメディアでもLGBTQに対するポジティブなニュースはあまりないようです。ひとつの例として、LGBTQを肯定するようなスピーチや放映は必ず削除され、報道の自由がないことも問題視されています。少し調べるだけでも以下のようにたくさんの事例が出てきました。
- 2008年、シンガポールの国営テレビによる、リアリティ番組「ファインド・アンド・デザイン」で、養子を迎えた同性カップルが出演。子ども部屋の準備を手助けするというエピソードを流したことにより、メディア開発局は15,000シンガポール・ドル(1万800米ドル)の罰金を課せられた(1)
- 2008年、メディア・コープで放送されたエレン・デジェネレス・ショーにて、15歳のゲイの生徒が殺害されたことについてのニュースを放映。同性愛嫌悪の批判を述べたシーンが検閲された(2)
- 2008年、女性ふたりがキスをしたシーンをコマーシャルで流したことで、10,000シンガポール・ドル(7,200米ドル)の罰金を課された(3)
- 2009年、米国アカデミー賞授賞式の放映にて、受賞者であるショーン・ペンのセクシュアルマイノリティに対する差別についてのスピーチが削除された(4)
また、ホモフォビア(同性愛や同性愛者に対して否定的な価値観を持つこと)はテレビ番組だけでは留まりません。
- 2021年、学校の先生によりトランスジェンダーの学生のホルモン治療を禁じられたことを受け、学生5人が教育省本部前でデモ。数分で警察が駆けつけ、うち学生3人が逮捕された(5)
このように、2021年に突入したいまでもLGBTQに対する差別禁止の保護はありません。
保守的な国の持続
このように、さまざまな場でLGBTQを肯定するスピーチや放映が削除。われわれが日常で触れるメディアがホモフォビアに加担することで、多くの人がセクシュアルマイノリティを受け入れようとする思考から引き離されています。しかし、男性間の性行為を禁ずる刑法377A条が未だに存在する意味はあるのでしょうか。
2007年には刑法377A条の廃止をめぐり、8,120人もの署名が集められました。請願書は国会に提出されましたが、歴代の首相は保守的なシンガポールの考え方を支持することを理由に訴えを棄却し続けています。(6)
シンガポールという国に訪れて実際の生活を体験するまで、LGBTQに関する差別や偏見を知ることはありませんでした。これは日本でもいえることであり、当事者とならないと問題視できない現実があります。
近年、さまざまな権利をめぐった声があがってきています。ですが、問題意識をもつ当事者だけが行動に移すのでは足りないのです。ゲイの甥っ子をもつシンガポールの首相でさえも、自分ごと化せずに保守的な国を持続しようとしています。
ですが、実際に自分や自分の子どもがありのままの姿で過ごすだけで罰せられたらどうでしょうか。誰もがマイノリティになり得る社会で、社会を自分ごと化することが求められるのだと思います。
- 参考:(1)fridaeasia、(2)INFOCOMM MEDIA DEVELOPMENT AUTHORITY、(3)fridaeasia、(4)PRIDE SOURCE、(5)mothership
- image by:Unsplash
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