Fさん(女性、50代)のケース
Fさんは幼いころからほっぺが真っ赤で、それをいつも家族全員からからかわれていたそうです。
近所の人の前でも、友達がいる前でも、なにかにつけて「赤ほっぺ」と蔑むように呼ばれ、それがとても屈辱的で悲しかったそうです。
ある日、勇気を出して「やめてほしい」と親に伝えたら、「何を言っているんだ?かわいらしいから言っているだけだろ?まったく顔が赤ほっぺだと、こんな冗談もわからないのか(笑)」とさらに笑われ取り合ってもらえませんでした。
また、Fさんは家族の中でほかの兄弟はされないのに、いつも「ネタのターゲット」にされていたそうで、それに抵抗しようものなら、「本当に赤ほっぺは冗談がわからないな」とバカにされた上に、冗談のわからないお前が悪いと悪者扱いにまでされたそうです。
家族のなかで孤立無援の状態で、感情の持っていき場所がなかったFさんは、人の言葉に対してひどく神経質で過敏になっていきます。
相手のちょっとしたひと言にムカッときたり、ひどく落ち込んだり、ひどく恥ずかしがるようになり、まわりの人に対して強い不信感や嫌悪感を持つようになっていったそうです。
Fさん自身、そうした対人反応の根っこにあるのは、「幼少期から家族にネタにされ続け、自分の不快な気持ちを受け止めてもらった経験がないことが原因だと思います」と自己分析していましたが、まさにその通りといえるでしょう。
弱虫で意気地なしのダメ人間
さらに悩ましいことに、幼いころから人に不信感を持ち、相手の言葉に過敏に反応してしまうFさんは、小学校時代からそうした特徴を級友からからかわれるようになります。
小学校時代は、まだ「からかいレベル」だったそうですが、中学校時代になると、からかいはエスカレートし、まさに「イジメ」になっていきます。それによって、Fさんの対人恐怖、対人不安、対人不信はさらに強化されていきます。
学校に行っても家に帰っても、どこに行っても「絶対に勝ち目のない状況」に置かれ続けることで、いつしか自分自身のことを「弱虫で意気地なしのダメ人間」と自虐的に思うようになり、その思いは大人になった今でもしっかりと心に焼き付いているといいます。