個々によって異なる場合もあるセクシュアリティの認識
続いて、2020年にAro/Ace調査実行委員会が実施した、日本で初めてアロマンティックを主な対象にした調査の結果をご紹介します。調査の対象となったのは、上記でご紹介したセクシュアリティまたはその他周辺のセクシュアリティを自認する13歳以上の人で、1,678人の当事者が回答しました。
調査では、アロマンティックなどを自認する当事のなかの81.4%が「恋愛的かつ性的な関係のパートナーを望まない」と回答。
恋愛的でも性的でもない関係のパートナーを望みますかという質問に対しては、49.6%の方が「一人、パートナーを望む」と回答し、必ずしもパートナーとなる人=性的・恋愛的感情を要するわけではないと認識していることがわかります。
また、回答したアロマンティックなどの当事者が嫌悪感を覚える行為については、「性的な誘いを受ける」が一番多く、続いて「性的な目で見られる」「恋愛感情を向けられる」「自身に対する恋愛感情があることを告げられる」という結果が出ました。特定の行為として、「キスする」「手をつなぐ」「ハグする」などがあげられています。
海外の文化ではキスやハグが挨拶として使われる国もあり、個々によって何を性的・恋愛的と認識するかは異なります。セクシュアリティを決める境目というのは人それぞれであり、その人の自認するあり方を尊重することが大事なのです。
正しい認識を広めよう
世間的にはマイノリティとされるアセクシュアル、アロマンティック。少数派であることから、正しい認識がなかなか広まりにくいという問題もあります。さまざまな誤解を少しでも減らすため、個々が知ることから始めましょう。
ここでは、アセクシュアル、アロマンティックに関するよくある誤解を紹介します。
「アセクシュアル」に関する誤解
性的感情を(ほとんど)抱かないアセクシュアルですが、性的感情を伴う営み自体をネガティブなものだと認識しているわけではありません。
ただその人が性的な感情をもたないだけであり、ほかの人の行為に対して否定的になっているわけでもありません。人それぞれのあり方があることを理解することが大事です。
アセクシュアルは珍しいわけではない
現社会ではアセクシュアルが可視化されることが少ないため、当事者がカミングアウトしづらい環境がまだまだあります。珍しいセクシュアリティとして認識されがちですが、異常だなんてことは決してないのです。
「アロマンティック」に関する誤解
恋愛感情を(ほとんど)抱かないからといって、アロマンティック当事者は冷淡な人間ではありません。「男性だからこう」「女性だからこう」など人の性格や人格は、セクシュアリティによって定義されませんよね。
同様に、アロマンティック=感情をもたなかったり、冷淡であるというわけではないのです。
キスや夜の営みをしないわけではない
恋愛感情を(ほとんど)もたないセクシュアリティであるため、なかには性的感情をもつ当事者もいます。ですが、アセクシュアルの意味を含めアロマンティックと呼ぶ人もいるため、個々によって異なります。
ただ恋愛経験がないから自認しているのではない
アロマンティック当事者に対して「恋愛していないからわからないだけだよ」「きっとこれからいい人はいるよ」と言うことは、恋愛感情をもつことの優越を内面化してしまっている可能性があります。恋愛感情を抱くほうが幸せという認識は、必ずしもすべての人に共通するわけではないのです。
上記以外にもさまざまな誤解は存在します。共通していえることは性のあり方はさまざまだということ。自分の考えを相手に当てはめるのではなく、その人として認識することが大事でしょう。
すべての人が恋愛感情や性的感情をもつわけはありません。自分との違いがあることで否定的になるのではなく「そういったあり方も存在するのか!知らなかった!」と知る意識をもつことが可視化の第一歩につながるのです。
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