マッチングアプリで出会った優斗とエリカ。昼のデートでは買い物や映画、カフェを楽しみ、夜からのデートのときもお互いにホテルに誘うことはなく、3回目のデートでようやく手をつないだ。
順調そうに見えたふたりだが、その後優斗はエリカのLINEをブロックしてしまう。3回目のデートのあと、なぜ優斗はエリカのLINEをブロックしたのだろうか。
- 登場人物
- 優斗:この物語の主人公
- エリカ:マッチングアプリで出会った女性
1度目のデートで天使と出会った
「よかったら、今度一緒に食べに行きませんか?」
新しくできた「おいしい」と話題のパスタ屋。マッチングアプリで知り合った女の子、エリカさんも気になってるというから思い切ってデートに誘ってみた。
「ぜひ行きたいです!次の土曜日はどうですか?」
エリカさんはすぐに返事をしてくれた。俺はデートへの期待に胸膨らみ、ドキドキが止まらない。
当日は何を着て行こうか。ランチしたあとは解散したほうがスマートだろうか。
礼儀正しくて返事も丁寧。メールだけでも優しさが伝わってくる、まさに理想のタイプの女の子。長い髪の毛を緩く巻いて、にっこり笑うプロフィール写真も俺の心をときめかせた。かわいいな、こんな子と付き合えたら毎日幸せだろうな。
そしてデート当日、エリカさんが待ち合わせ場所に現れた。
「あの、優斗さんですか?」
「はい。えっ…エリカさんですか…?」
俺は目の前に現れた女性を見て、思わず驚いてしまう。写真よりも数倍可愛くて一瞬で恋に落ちてしまったからだ。
「すみません、写真はちょっと加工してて…実物、違いますよね」
苦笑いするエリカさんを前に、俺はつい必死に訂正してしまった。
「そんなことないです!実物のほうが可愛くって驚きました。めっちゃタイプです!」
あまりの必死さに、一瞬エリカさんが目を丸くする。ああ、引かれてしまったかも…そう思ったのもつかの間、エリカさんは笑ってくれた。
「ふふふ、お世辞でもうれしいです。ありがとうございます。じゃあさっそく行きましょうか!」
ニコニコと微笑むエリカさんはまるで天使のようだった。
食事中も、目の前にこんなかわいい天使がいるなんて夢かもしれないと何度も思った。
「可愛い勘違い」のはずだった
楽しいデートはあっという間に時間が過ぎた。エリカさんと手を振って別れてから、俺は帰りの新幹線でスマホを眺めている。
おいしかったパスタの写真。照れて笑うエリカさんの写真。「空がきれいですよ」と言われ、一緒にカメラを向けた青空。
「また会いたいなぁ」
ポツリと呟いて窓の外を見る。片道2時間かけて来たかいがあった。
ぼんやり景色を眺めていると、ブブ、とスマホが震える。エリカさんだ。さっき連絡先を交換したのだ。
『きょうはありがとうございました、とっても楽しかったです。またお会いしたいなと思ってるんですが、都合のいい日はありますか?』
積極的なエリカさんからのメッセージに思わずドキドキする。天使なのに中身は肉食系?俺の理想通りじゃないか。心のなかで小さくガッツポーズをして、すぐにスケジュールを送信した。
「来週の土曜日はどうですか…っと」
エリカさんからの返事はすぐにくる。
『大丈夫です!よろしくお願いします』
意図的か、それともただの偶然か。エリカさんがつけたハートマークを眺めていると口角が上がってしまった。もうすっかり彼女に惚れこんでいるらしい…我ながら、ハマりっぷりにちょっと引いてしまった。
しかし、俺はすぐにエリカさんへの想いを考え直すことになる。それはデートを来週に控えた、金曜日の夜だった。
『あしたのデート楽しみですね!』
エリカさんのメッセージを見て俺はきょとん、とする。デートは来週の土曜日のはずだ。
「あしたはデートじゃないよ、来週だよ!間違っちゃった?」
『あ、そうでしたっけ…?すみません。勘違いしてたかも。あしたは会えませんか?』
「ごめんね、あしたは予定があるんだ」
『そうですか…何の予定ですか?』
「友達と遊ぶんだよね」
『女の子ですか?』
「違うよ!男友達だよ」
『じゃあ私も行きたいです!』
思わず返信を打つ手が止まった。すぐにエリカさんの冗談だと気づき、俺は返信をする。
「急な冗談やめてよ~、びっくりしちゃった」
『冗談じゃないですよ!それとも会っちゃいけない理由があるんですか?それってやっぱり女の子ってことですよね…』
「ちがうちがう。でも俺たちまだ1回しか会ってないし、彼女だったら話は別だけど」
『じゃあいますぐ彼女にしてください!』
積極的すぎないか?俺はエリカさんの態度にだんだんと引き始める。
「お酒飲んでる?酔ってるの?」
『酔ってないですよ。本気です。彼女にはしてくれませんか?』
「うーん。もうちょっと話してから考えたいなと思ってたよ」
『じゃああしたお友達と遊んだ後に私と会ってください。それで決めてください』
『あした18時に先週待ち合わせした駅で待ってますね。絶対来てくださいね』
『約束ですよ』