6歳の女の子を持つママライター、EMIです。私の母は、アルツハイマー型認知症。認知症と診断されてから5年が経ちます。介護度は「要介護2」で、現在は高齢者住宅で介護サービスを受けながら生活しています。
認知症が進行すると、記憶障害、理解力、判断力の低下、意欲低下など、さまざまな症状が現れ、家族はそれに向き合っていかなくてはなりません。
そのなかでも、今回は日常的生活のあらゆることや自分自身に対して関心や気力が失われていく症状、「意欲低下」についてお話しします。
認知症になる前の母は、明るく活発な性格でしたが、認知症が進行するにつれて以前より何事にも意欲が低下し、寝ている時間が増えてきたのです。
今回は、そんな母とどのように向きあい、接してきたのかをお話します。この記事が、認知症のご家族の介護をしているかたのお役に立てば幸いです。
- 母と私のこれまで
- 68歳で「認知症」になった一人暮らしの母。一人っ子の私のそれからの暮らし
- 認知症になってからお風呂に入らなくなった母。「入浴拒否」を乗り越えた方法
- 認知症になってから物をなくすようになった母。探し出す方法と向き合い方
明るく活発な性格だった母の、変わり果てた姿
認知症になる前の母は、手芸講師をしていたこともあり、明るく社交的な性格でした。しかし認知症になってから、驚くほど変わってしまったのです。
外出する意欲が減り、おしゃれに対する関心も薄れていきました。以前はおしゃれ好きで身だしなみには気を使っていたのですが、いまではほぼ毎日同じ服、髪の毛はボサボサ…。
毎月通っていた美容院に行くのさえ、ためらうようになりました。「美容院に行きたい」と言っておきながら、出かけるのが億劫になったのか突然ドタキャンすることも頻繁にあります。
また、長年やっていた手芸講師も続けられなくなり、辞めることになりました。手芸講師を辞めて人と会う機会が減ったことで、さらに意欲は低下していったのです。
そして、意欲の低下とともに寝て過ごす時間が増えました。高齢になると昼寝時間が増えるのは自然なことですが、過剰な昼寝は認知機能の低下につながります。
母の場合、昼食を食べた後夕食の時間まで寝て過ごすことが毎日の日課になり、夕食後も「眠いから」と言ってお風呂に入らずに寝てしまうことも多くなりました。
このように、私の母は認知症になってから意欲が低下して、別人のようになってしまったのです。
母のように、これまでできていたことに関して、無気力、無関心になることを「アパシー」と言うそうです。認知症で見られる症状の一つでもあります。
認知症になると脳の障害により以前よりも脳を働かさなければ、周囲とうまく馴染めなくなってきます。周囲と関わる際に多くのエネルギーを使うことで、心身共に疲れやすくなるのです。
その結果、いままで楽しいと思っていたことが楽しめなくなり、意欲の低下に繋がると考えられています。
うつ病と似ている症状ですが、うつ病には抗不安薬などの薬が使用されますが、認知症による意欲低下には効果的な薬がないのが現状です。
認知症による意欲の低下には「楽しみを持つきっかけを作る」ことが重要
認知症の進行で意欲の低下が見られるとき、家族はどのように対応すればよいのでしょうか?
私は意欲が低下した母と過ごして、身近にいる家族が「楽しみを持つきっかけを作ること」が重要だと感じました。
認知症が進行してから、家に閉じこもりがちになった母。そんな母の姿を見て私は、「少しでも何か楽しみを持って過ごしてもらいたい」と感じていました。
家に閉じこもりがちになった母に「一緒に買い物へ行こう」「散歩へ行こう」と誘い、外出する機会を増やそうと試みたのです。外出をすることは、脳にとってよい刺激になり、脳が活性化されると言われています。
最初は、「眠い」「疲れている」と何かと理由をつけて外出を渋ることが多いのですが、何度か誘うとあっさりと応じてくれることもありました。
母の場合、1人だと外出する意欲がわかず、家に引きこもることが多いのですが、私の子ども(孫)と一緒に何度か誘ってみると嬉しそうに出かけます。母にとって、私の子ども(孫)と一緒に出かけることが、楽しみのひとつとなったのです。
散歩をしてウィンドウショッピングを楽しみ、カフェでゆっくりと過ごす…ちょっとした外出でも、母にとってはよい刺激になり、息抜きになっているように感じました。
母が高齢者住宅に入居してからも、週末は子どもと3人で出かける時間を作るようにしています。