自分がパワハラする側にならないために
前職で働いていたときの僕にとって、「仕事をしないこと」は最大の悪でした。
直属の上司も割とストイックな人で、上司のことを尊敬していた僕は、上司を真似るように仕事に対しての考えを厳しくしていきました。
仕事に対して厳しい考え方を持つことを、一種の美学のようにも考えていたのかもしれません。
だからこそ仕事に集中できなくなっていく自分が許せなかったのだと思います。
上司と僕が違ったのは、僕はその厳しさを周りにも求めてしまっていたことです。
僕にとっての仕事に対する強い姿勢は、美学であり社長からの叱責や終わらない長時間労働と仕事量の重圧から自分を守るための鎧でした。
頑強な鎧をまとっていたから、前職に長い間勤めることができたのです。
しかし新しい職場ではその鎧を外さなければなりません。そうしなければ、今度はこの穏やかな職場で僕がパワハラをする側になってしまうでしょう。
前職でも誰かに直接口にして伝えてはいないものの、「この人はなんでこうしないんだろう」「こうすべきなのに」と他者の行動に対しても自分の考え方を当てはめていたので、新しい職場ではこれをやめようと誓いました。
長年続けてきた考え方を変えることは、一朝一夕でできることではありません。
しかし「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、新しい環境に合わせて変えなければいけない場合、思考の訓練のようなものではないかと考えています。
「こうすべきなのでは?」と感じたら、“この職場で必要とされているか”を基準に考え、必要なければ固執せずに「こういうものだ」と受け入れる。
この“必要とされている”ことは、言い換えれば仕事のスキルやスピード、クオリティを闇雲に上げることではなく、「相手が求める内容とレベル感かどうか」という意味でもあります。
求められているレベル感は、職場や相手によってかなり異なりますよね。だからそのレベル感を自分で勝手に決めつけず、相手とコミュニケーションをとりながら相手に合わせる。
過ぎたるは及ばざるが如しとはよく言ったもので、やりすぎない、ちょうどよさを目指すことに考え方を切り換えようと思いました。
もし、あなたが必要以上の鎧を着ているのなら…
入社3日後に感じた安堵感は、いまも続いています。
そう感じたうえで改めて、前職での「当たり前だったこと」が、悪い意味で「当たり前ではいけなかったこと」だったのだと痛感しました。
怒鳴り声が日常的な職場は、健全ではありません。
考え方を変えていく訓練はいまも継続していて、まだふいに鎧を身に着けてしまいそうになることもあります。
それでも鎧を着ないという訓練を繰り返していくことで、いつか鎧を捨て去ることができるようになりたいです。
もし、あなたが僕のように心に必要以上の鎧を着なければ働けないと思う職場に勤めているのならば、ほかの環境に身を移してもいいと思います。かならずしも転職ではなくても、ほかの支店や部署、チームへの異動が叶うのならそれでもいいでしょう。
僕の前職のように、怒鳴り声をよく耳にする職場に身をおいていて、なおかつ仕事がうまくいかないというかたも、ほかの環境を考えていいのではと考えます。
たとえ自分に対しての叱責ではなくても、怒鳴り声を毎日のように耳にすることが、周りの同僚やあなたの心と身体にもたらす悪影響はとても大きいと覚えておいていただきたいです。
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