他人の前でパートナーを「たいしたことない」と言うのは謙遜ではない
男女関係なく、恋人や配偶者について褒められると「たいしたことないですよ」「いやこんなダメなところもあって」と価値を下げるのが謙遜だと思う人がいますが、これも立派なモラルハラスメントです。
パートナーを褒められて「そうですね!」と笑顔で返すことは傲慢だと感じる気持ちはわかりますが、自分についてパートナーが否定する姿を気持ちよく受け入れられますか?
「人前だから仕方ない」「そう答えるのが常識」、謙遜や謙虚を「価値を下げる」と思うのは勘違いで、多いのは隣にパートナーが立っているのに平気で否定する言葉を吐くことです。
仕事に精を出す夫が、家事を引き受ける妻を上司から褒められて「いやまだまだです」と答えるのを見て、妻はいい気分がするでしょうか。
育児をしっかり分担して園のお迎えに行く夫をママ友が羨ましいと言うのを聞いて、「これくらいしかできないのよ」と妻が返していれば、一緒にいる夫の自尊心はどうなるでしょうか。
他人がせっかく触れてくれた自分の状態を、よりによって身近な人が「そんなことはない」と切り捨てることは、悲しくも寂しくもあり、やる気が失せるのは当たり前です。
自分を自慢の道具に使われるのも嫌だけれど、パートナーの「そうだね」と肯定する一言があれば、それだけで心は満たされます。
考えないといけないのは、その言葉を受けた相手も返事に窮することで、前向きな会話を望んでいたのに否定されてしまうとその後の展開が暗く窮屈なものになる点です。
恋人や配偶者を褒められたのならまずは素直に「ありがとうございます」と返すのが自然で、傲慢と思われたくないのなら「助かっています」「自分もそう思います」と控えめな言葉で肯定するに留めるのが正解と筆者は思います。
ふたりきりのときにいくら感謝しても、外の世界に出れば自分は努力を認められない存在と思い知ることは、ふたりの関係にとってよいことでは決してありません。
距離が近いからこそ、一番大切にしたい「かける言葉」
恋人であれ夫婦であれ、一緒に過ごす時間が長くなるとそのつながりに慣れて、冗談や軽口で笑い合うこともあると思います。
モラルハラスメントが生まれるのはこの「慣れ」が原因で、ちょっとした嫌味やからかいを「許してくれるだろう」と一方的に思う油断がふたりの関係を悪化させます。
恋人だから「いつまで経っても料理が下手だよな」と言っても相手は気にしないだろう。配偶者だから「本当に稼ぎが悪いんだから」と真実を言っても怒らないはず。
それは、全部自分の都合です。慣れた間柄だからこそ、自分の弱点や劣等感を安易に刺激されることに大きなショックを覚え、それまで育ててきた愛情は信頼が揺らぎます。
距離の近い人とのモラルハラスメントでは、相手が受け入れがたい言動をとる側は「そんなつもりはない」「そっちの受け取り方が大げさだ」「言われるほうにも原因がある」と自分を省みることをしません。
相手の気持ちを無視する自分には気づかず、「この程度のことで」で済ませたがるのは、関係に甘えている証拠。
そんな自分が相手にどう映るのか、第三者が見ればどう感じるか、「自分の都合」は外の世界では通用しないのが現実です。
小さくてもモラハラが続けば愛情は消えるのが当たり前、と心得たいですね。
近い存在だからこそ、かける言葉が相手にどんな思いをさせるかを想像することが必須で、その配慮をお互いに大切にする姿勢が強い絆を育てます。
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