他人を攻撃し、罵倒したり人格否定に走ったりしては相手の自尊心を傷つけるのがモラルハラスメント。
人を大切に思う気持ちがあれば、嫌な言動で苦しめるようなことはできないはずですが、それを実行できる要因の一つに距離の近さがあります。
軽口の叩けるような関係だとしても、ひどい言葉をぶつけても「許してもらえる自分」を勝手に用意するのは間違いです。
身近な人ほど起こりがちな「小さいけれど見逃してはいけないモラハラ」について、ご紹介します。
「ダイエットすれば?」は相手の自信を奪う
恋人や配偶者が太ったような気がして、また相手もそれを実感しているような言動を見ると、「ダイエットすれば?」とつい口に出てしまうことがありませんか?
自分では提案のつもりで特に悪意はないとしても、言われた側は「いまの自分ではダメなのだ」と自信を失います。
「ダイエットすれば?」は体型の悪さを指摘することと同じで、近い存在の人に言われてしまうとショックは大きいものです。
「そんなことを言うなんてひどい」と予想外の言葉が返ってきて、口にした側は「健康を気遣って」「よかれと思って」と説明しますが、そもそも相手が減量を望んでいるかどうかの確認を怠ったのが最初。
「この程度でモラハラなんて」と驚く人も多いですが、たとえば自分が太ってしまってそれを気にしているとき、恋人や配偶者に「ダイエットすれば?」と言われたら「太った自分」を余計に実感しないでしょうか。それはいまの自分を否定されたような気持ちになりませんか?
自分が先に「痩せたほうがいいかな?」と言った後で返ってきた言葉ならうなずけますが、ダイエットまでは考えていないときにそれを言われてしまうと、まるでこのままではいけないような気にさせられます。
明確なモラルハラスメントは、太った自分を気にする人に向かって「みっともないから痩せれば」とからかうことですが、体型について何かを指摘するような発言は、どんな場合でもデリカシーのなさが前に出ます。
相手の意思や意図を知ったうえでの発言でないのなら、アドバイスのつもりでも控えるのが正解。
恋人や配偶者など距離の近い人にはつい気軽にできてしまう「指摘」が、実は相手を大きく傷つける可能性を考えたいですね。
「褒めているつもり」は通用しない
「たくさん稼げていいよね」「気楽な生活で羨ましい」など、相手の状態を持ち上げた言葉もモラルハラスメントにあたるものがあります。
恋人や配偶者の収入が多いことが気に入らず、正面からそれを口にすると劣等感を見抜かれるから「いいよね」という言い方でごまかす人がいますが、嫌味はすぐに見抜かれるものです。
パートナーに友人が多く、いつも楽しそうにコミュニケーションをとる様子を見て自分の孤立を感じ、そのイライラから「いつも楽しそうで羨ましいよ」「友達が多くて結構だね」とあえてその状態を指摘しては「そうでもないよ」と相手が否定するのを待つ人もいます。
これは、相手にその状況を「楽しくない」と認めさせることで自分の溜飲を下げたいからで、こんな言葉も嫌がらせでしかありません。
「そんな言い方をしないでほしい」と言うと、「けなしていない」「褒めているつもりだけど」と自分の言葉を正当化しますが、どんな表現であれ言われた側に嫌な思いをさせるならモラハラです。
本心で褒めたいと思っているのなら、「仕事をがんばっていてすごいね」「友達が多いのは魅力がある証拠だね」とまっすぐに相手の長所を見た言葉が出るはずで、状況の上辺だけをとらえた発言ほどその下には深い嫉妬や劣等感があるのが伝わります。
距離の近い人が「自分より楽しい人生を送っている姿」は、つい比較する機会が多く相手より下の自分を実感することで攻撃したい欲が出てきますが、「褒めているつもり」は通用しません。
相手を貶めて満足するより、自分も努力する道を考えるほうが健全といえます。