ネット音痴な夫がスマホデビューした日
夫のスマホデビューにあたり、誰よりも覚悟しなければならないのはわたしでした。
夫のネット音痴は日々の生活で十分すぎるほど知っています。夫は家電なども「なんとなく感覚で使う」ということができないので、おそらくスマホもひとつひとつ丁寧に教えないと使えないのは想像に難くありません。
なのでデビュー後はわたしが「24時間いつでもコールセンター」状態になるのは目に見えていました。
しかも、教えてもらっている身分のくせに「もういい、わかったからいい」とわかってないのに投げやりになったり、かなり面倒くさい性質なので、わたしのイライラがMAXになることもあるだろうと思うと、夫のスマホデビューが負担になります。
ですがいつまでも先延ばしにしていても仕方ないと、自分が動けるときに片づけてしまおうと、わたし主導で夫をスマホデビューに導くことにしました。
機種はiPhone一択。なぜならわたしがiPhoneだから。おそらくネットも怖がってあまり使わない夫にはiPhoneはオーバースペックだと思われましたが、下手に操作の違うアンドロイド端末を持ってしまうと、その使い方をわたしが調べて教えなければいけない。
それは絶対にわたしがイライラすると確信していたので、なんの選択肢も与えずにiPhoneを買いにアップルストアへ。
おしゃれでハイセンスなアップルストアに入っていき、「KEN」みたいなファーストネームのプレートを掲げた若いスタッフに案内されていろんな説明を受けましたが、おそらく夫は半分もわからなかったと思います。
完全に借りてきた猫のようになり、わたしが勝手に話を進めました。夫が選んだのは色ぐらいかな。
そして初めて手にしたiPhone。夫は持つのもこわごわ。「電話ってどうやってやるの」「写真はどう使うの」など、本当に赤ちゃんのように手取り足取り、ひとつひとつレクチャーしました。
とりあえず電話とメール、カメラ、あとLINEだけできればなんとかなるので、まずはそれだけを教えました。
晴れてiPhoneを手にし、オシャレなアップルストアを後にすると、その足でいままでのガラケーのデータをスマホに移すべくドコモショップへ。
スマホ同士のデータ移行は簡単ですが、ガラケーからスマホへの移行は、ガラケーの端子が必要になるので面倒です。
わたしもガラケーから離れて10年ほど経つので、すでにガラケーの扱い方を忘れていましたが、データ移行もすべてわたし頼みだったので、ドコモショップのスタッフさんに聞きながら写真などのデータ移行にチャレンジ。
データ移行は、本当はドコモショップのスタッフにやってもらおうと思ったのですが、いまは自己責任でセルフでやることになったらしいので仕方ないですね。
横で立ってるだけの夫は、息子が小さいころの写真を見ながら「懐かしいなぁ」とかのんきに言っていましたが、途中からある異変が。
データ移行中に何が入っているかわからないフォルダを開けると、なんとエッチな写真が何枚も出てきました。まぁ恥ずかしい。「これいつの?」と聞くと、「すごく昔に何かでダウンロードしたやつ」と小さな声で言いました。
「これ、ドコモショップのお姉さんに頼まなくてよかった…」と内心冷や汗をかきました。
「この画像は移行しなくていいよね?」と確認すると、小さい声で「消していいよ」と。まったくもう。
やっとガラケーのデータを移行し、スマホデビュー完了。ですが本当にデビューしただけです。
帰りにスマホの液晶画面保護シートと、スマホケースを買うのも「この機種だから、ここから選んで」と案内し、つきっきりです。なんて親切な妻なのでしょう。
ですが、大変なのは帰宅してからです。まず、普通の4G回線と、自宅に引いているWi-Fiの説明が大変。
夫は「スマホでうっかり何かを押すと、お金がかかるんじゃないか」という恐怖心を持っているので、ネットで何かを見ようと思うたびにわたしを呼び「これって、ここを押すとお金かかるの?」と聞いてきます。
「この家のなかではWi-Fiが飛んでいるから、扇形のWi-Fiマークが出ていれば動画を見ても何してもお金はかからないよ」と何度言っても信用できないらしく、やはり日に何度も「これ押したらお金かかる?」と聞きます。
予想通り、24時間コールセンター状態になってしまいました。
早く慣れてくれと祈りつつ、わたしが何をしていてもお構いなしに呼ばれるので、ついイラッとして「24時間ヘルプの給料がほしいわ」とこぼすと、夫はすかさず「でもお前たちの携帯料金も払ってやってるんだからそれくらい教えろ」とのこと。
たしかにそうで、そう言われたらぐうの音も出ないけど、そこは「いつでも聞ける相手がいて、助かってるよ」とか言っておけば気分がよくなるのにね。彼にいつも足りないのは「あ・り・が・と・う」の言葉です。
そんなこんなで、使い慣れるまで1カ月ほどかかったでしょうか。やっと夫はスマホがなんとなく使えるようになり、孫の動画も写真もじゃんじゃん送られてくるようになったようです。やはりお嫁さんも、わたし経由では送りにくかったのだと思います。
ですが夫はあまり写真や動画に興味がなく、「こんなにいっぱい送って来なくてもいいのになぁ」とつぶやきながら見ています。
ガラケーのころはわたしがちょうどよいダム代わりになっていましたが、ダムがなくなったいま、夫のスマホはおそらく孫だらけになっていると思われます(笑)。
ネットにからっきし弱い夫は、スマホデビューで少しネットに慣れたのか、Netflix(ネットフリックス)のようなオンデマンドや、Tverなどの見逃し配信もわたしに聞きながら少しずつ見るようになりました。
その姿を見るたび、「わたしのように若くてネットがわかる人がいてよかったね」と思います。
今年の家族旅行も、航空券、宿のネット予約などの手配はすべてわたしがやりました。
最近は、お得なプランはネット決済限定などもあるので、わたしがやるほうが効率がいいのです。
その代わり、旅行費は全額夫持ち。ネット音痴な70歳の夫と、ネットに強い50歳のわたし。なんだかんだで、うまく需要と供給が成り立っているなぁと思うきょうこのごろです。
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