20代後半から30代にかけて訪れるという、幸福の低迷期「クォーターライフクライシス」。
周りのほうが幸せに見える、自分は劣っている、なんのために自分は生きているんだろう…そんなネガティブな思いが強くなったら、クォーターライフクライシスに突入しているかもしれません。
今回は、クォーターライフクライシスに突入したという3人の体験談を紹介します。
夢を諦めたら、クォーターライフクライシスになった
「中学のころからずっと絵を描くのが好きだったので、将来は絵を描く仕事に就きたいと思っていました。しかし美大の受験に失敗。浪人して親に迷惑をかけることもできず、第二志望の大学に進学。絵と向き合うことはそれ以来めっきりなくなり、気づけば普通の会社員になってました」
そう話してくれたのは、ハルさん(28歳)。1年前までクォーターライフクライシスに悩まされ、つらい時期を過ごしていたと言います。
「ある日、当時付き合っていた彼と似顔絵を書いてもらったんです。そのとき似顔絵を描いてくれた人の表情がとにかく楽しそうに見えて、思わず『お姉さん、この仕事好きなんですか?』と聞いてしまいました。そしたら『天職です!好きを仕事にできるって最高ですよ!』と言ってくれました」
その言葉を聞いた瞬間、ハルさんはすっかり忘れてしまった自分の夢を思い出します。
「絵を描きたい、絵で食べていきたい。もしあのとき親の迷惑なんて気にせずに美大に再挑戦していたら、私の未来は変わっていたかもしれない。やりがいのない会社でダラダラと働き、そこで知り合った芸術になんてこれっぽっちも興味のない彼氏と付き合い、きっとこのままダラダラと暮らして、結婚して、子どもを産んで、人生を終える。そんな未来を考えたらとにかく怖くなりました」
その日からハルさんは、自分の過去を思い出しては後悔するようになり、それまで楽しく過ごせていたはずの毎日がまったく楽しくなくなってしまいます。
「やる気も出ず、仕事の成績も悪化。ミスも増え、何度も上司に怒られました。自分では集中してやっているつもりなのに、どうも身に入らないんです。いまからでも挑戦してみようかなという私の言葉に『食べてけないよ、無理だって』と言ってきた彼氏にはカチンと来てしまい、4年も付き合ったのに、お別れしました。
同棲を解消して実家に帰ったときは、母親に『アンタが悪い』と言われ、カッとなって険悪なムードに。私だってどうすればいいかわからない…過去に戻れるなら戻りたいと何度も思いました」
過去に引きずられ、あっという間にクォーターライフクライシスに陥ってしまったハルさん。
周囲との人間関係もギクシャクし、どうしようもなくむなしい日々が続いたそんなある日のことでした。ハルさんに転機が訪れます。
「友人に誘われて行った陶芸教室で、70代のおばあちゃんが『ずっと陶芸をするのが夢だったの』と話していました。『夢を追うのに、年齢は関係ないわよね』と。それを聞いたとき、ああいまからでも、とりあえずチャレンジしてみればいいんだと、考えがスッとまとまりました。
いまなら失敗しても迷惑がかかるのは自分だけ。学生のころより、いまのほうが挑戦しやすいじゃんと前向きに考えられるようになったんです」
それからハルさんは再度美術について本気で学びはじめ、現在はデザイン事務所に思い切って転職。
覚えることが多く不慣れな日々が続いていると言いますが、気持ちはとても安定しているんだとうれしそうに話してくれました。