我慢できなかったこと
その年も、マキさんは暗い顔をするお子さんをなだめて夫と3人で義実家へ向かいます。
「2日の辛抱だからね」と自分にも言い聞かせていたと話すマキさんですが、問題はやっぱりお年玉を渡す場面で起こりました。
「義母が、たまたま購入した宝くじで小金が当たったと言って、それを長男さんの子には『お前にはたくさんあげるからね』と言い、うちの子には『お前は少しでいいだろう』って笑いながら伝えたんですね。
長男さんの子には2万円、うちの子は5千円ってあからさまな差をまたわざわざ口にして、それを聞いた息子が『いらない』と泣き出しました。
そんな息子を見て義母が『なんてことを』と怒りだし、親戚の人もいるその場は気まずい空気でいっぱいで、そのときもう、堪忍袋の緒が切れました」
「同じ子どもでこんな扱いを受けるのなら、お年玉なんていりません」と、マキさんはきっぱりと口にします。
初めて見るマキさんの抵抗に義母は驚いた顔をしたそうですが、「感謝のできない人間なんて最低だね」とまだひどい言葉をぶつけてきたそうです。
そのとき、「いつも優しく声をかけてくださる」というある親戚の女性が「あなた、子どもの気持ちは考えているの?」と強い口調で義母に詰め寄ります。
「金額を口にするなんて、しかも子どもによって違うなんて、私から見ればあなたのやっていることは下品だし恥ずかしいわよ。子どもたちがどんな思いをするか、少しは考えたら?」
マキさんは突然の味方の登場に驚き、また「心底感謝しました」とそのときを振り返りますが、その女性が、以前からお年玉を渡す場面で眉をひそめていたのを思い出したそうです。
女性の剣幕に圧倒されたのか、下品で恥ずかしいという言葉にひるんだのか、義母は顔を真っ赤にして「もういい」と言いながらお年玉の袋をテーブルに叩きつけ、部屋を出ていきます。
マキさんは女性に泣きながらお礼を言ったそうですが、こんな事態になってもまだ、マキさんの夫は部屋の隅で突っ立っているだけでした。