みなさんこんにちは。私は、現在ソウルで留学生対象にシェアハウスを運営中。
日本では、福島第一原発処理水について、大きく報道されていたようですね。韓国国内でも、放出前から大きく騒がれています。
特に被害を被っているのはやはり水産業や寿司店などの魚介類を扱っている飲食店です。
放出前後の韓国人の動き
私の義弟(夫の弟)はソウル市内で寿司店を経営しています。私の夫も、共同で経営に関わっています。
経営して約3年(寿司店自体は5年以上営業中)経ちますが、お客さまのなかには地域の常連さんも多く、コロナ禍でもなんとか営業を続けてきました。
韓国では、寿司を食べるのを避ける時期があります。それは、夏。そして、雨の日です。
夏は「生ものは傷みやすい」との理由で寿司や刺身のような生ものを避ける傾向があり、季節関係なく雨の日も避ける傾向があります。なので毎年、梅雨や夏は売り上げが減っている印象です。
今年の夏はさらに福島第一原発処理水放出で寿司屋への客足が激減し、義弟の店の売り上げは下がる一方。営業を始めて以来の大打撃を受けています。
まず放出を開始するとのニュースが入ってきた途端、まだ放出を開始していないにも関わらず、 義弟の寿司店だけではなく、地域にあるすべての寿司店や刺身専門店から突然お客さんがいなくなりました。
そして放出開始する1週間前あたりからは、なんとお店が繁盛し始めたのです。普段より20%以上の売り上げになりました。
食事中のお客さん達の会話から聞こえてきたのは、「これでしばらく食べ納めだね」という言葉。しばらく魚介類は食べない方がいいから、放出前にたくさん食べておこうという気持ちで店を訪れた人が多かったようです。
そして処理水放出が始まった途端、お店の売り上げは50%も激減。過去最低になりました。
しかし、魚介類の仕入れ価格は下がることはなく上がる一方。生活のためにもお店を閉めるわけにもいかず、アルバイトを減らして社員だけでどうにか回している状態です。
寿司店や刺身専門店も実際このように被害を被っていますが、魚市場もまた、仕入れた魚介類がまったく売れない状況となっています。
夫が毎朝ソウル市のノリャンジ水産市場へ魚を仕入れに行くのですが、魚市場内はこれ以上ないほど閑散としているそうです。
また、仁川にある魚市場では日本産の魚介類があまりにも売れなくなってしまい、日本産を国産(韓国産)と偽造したり、原産地を表記せず販売する業者が多数摘発されているようです。
もちろん偽造はいけないことですが、そうでもしなければならなくなった販売業者の気持ちもわからなくはありません。
韓国の現在の大統領である尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏は日本の福島第一原発処理水放出を認め、韓国国民にも理解を求めていますが、野党である「共に民主党」がここぞとばかりに大反発。
特に李在明(イ・ジェミョン)代表はユン大統領に対して、断食をするパフォーマンスまで見せています。
保守派民主党を支持する国民も多く、ソウル市内でも処理水放出反対のデモが至る所で起きている状況です。
私の夫は現大統領支持派なので、被害を被ってはいても仕方ないと受け入れてはいますが、大統領の態度に少し納得できないそうです。
夫いわく、「日本を友好的に考えている現大統領が日本の処理水放出を認めるのは仕方がないが、韓国国民の代表なのだから、表向きだけでも批判をしなければならないのではないだろうか。何も言わないから、野党が攻撃をしてくるんだ」と。
韓国人は、日本食が大好き。特に寿司や刺身は高級料理として認識されています。
ちょっと贅沢したいときはお寿司を食べに行く人も多く、ドラマでも接待のシーンには必ずと言っていいほど日本食(特に刺身)が出てきます。
そんな寿司や刺身が大好きな韓国人にとって、処理水放出は大問題です。「寿司は食べたいけどなんか危なそうだから、焼き肉を食べに行こう」と、寿司店や刺身専門店とは対照的に、焼肉屋が大繁盛しています。
ただ、そんな状況でも、常連のお客さんが寿司店に顔を出してくれました。「いちいち気にしても仕方ない。食べたいから食べに来た」と言っていたそうです。
しかし、子ども連れのファミリー層は来なくなったそうです。
韓国は9月以降、秋夕連休(旧暦お盆)、クリスマス、年末年始、ソンラル連休(旧暦新年)とイベントが続きます。飲食店、特に寿司店にとっては1年で一番の稼ぎどきです。
しかし、処理水放出による韓国人の魚離れはそう簡単には改善されそうもありません。魚を扱っている飲食店や水産業はしばらく厳しい状況が続きそうです。
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