マインドフルネスの食事法
女医:さらにこの方法のいいところは、「マインドフルネス」になっているということよ。
青年:マインドフルネス?
女医:そう。マインドフルネスとは、いまの自分の感覚や状態を深く認識すること。マインドフルネスを行えば行うほど、精神的に安定して心の健康にいいことが知られているわ。
青年:聞いたことはありますけど、でもやるのをすぐ忘れちゃうんですよね。
女医:だからこそ、食事のときに実践してみてほしいの。今回の描写をしながら噛むというのは、そのままマインドフルネスになっている。そしてマインドフルネスの実践法のなかに「食事を味わって、より深く感じながら食べる」というものもある。より噛めるしマインドフルネスにもなるし、一石二鳥なの。
青年:は、はぁ…。
女医:最初のうちは、この習慣がなじむまでに時間がかかるかもしれない。でも何度も描写しながら食べているうちに、いつのまにか当然のように実行されているわ。
アイドルグループを考えよう!
女医:考え方を変えてみましょう。たとえば、あなたに好きなアイドルグループがいたとする。
青年:好きなアイドルグループ?
女医:そう。あなたのあこがれで、理想的な人が10人くらい集まったアイドルグループ。
青年:それはすごい!
女医:ここであなたのもとに、その10人がいっぺんに来たとする。そして10人全員があなたのことが大好きで、「握手しよう!」とか「ハグしよう!」と言ってきたとする。
青年:す、すさまじすぎる!
女医:こんなとき、あなたは2~3人くらいとだけ握手して、残りの7~8人はそのまま素通りしてバイバイするなんてことある?
青年:ありませんよ!全員と握手やハグします!
女医:大半の人がそう思うわよね?でも食事では、なぜかそれが行われないの!
青年:食事では…?
女医:そう!食事では、たとえば目玉焼きでも肉でも、口のなかに放り込まれたとき、すべてを完全に噛まれないまま、すぐに流すようにゴクンと飲み込まれてしまう。
青年:あっ…。
女医:知ってた?食べ物って、たくさんの細胞で構成されてるの。そして、すべての細胞に味がちゃんとあるの。
青年:うっ…!
女医:さらに言うなら、飲み込んだあとの胃腸には、味覚がないの。
青年:胃腸には味覚がない…。
女医:すなわち飲み込まれた瞬間、噛んで味わわれなかった細胞たちは、味を完全に無視して、ただ消化されてしまうわけ。よって重要なのは、とにかくすべての細胞をできるかぎり噛んであげること。結果、固形物である食べ物が、口のなかでドロッとしたスープ状になるまで噛めば、すべての細胞を味わったのに近くなる。まさにアイドル全員と握手したのと一緒になるのよ。
青年:そこまでしてあげないともったいない、ということですね…?
女医:その通り。そう考えると、より味わって噛むことの重要性がわからない?
青年:は、はい…!