20歳年上の夫と、高1マイペース息子と3人暮らしのアラフィフ主婦ライター、塩辛いか乃です。
世の中、謎の補助金がけっこう多いなと思います。
子育て世代に「異次元の少子化対策を」と言っていた岸田内閣がまたまたぶちあげた謎の施策、それが「私立大学の学費を、子ども3人いる家庭に限り無償とする」というもの。
聞いた瞬間に、耳を疑ったこの施策。今回は、気になって仕方ないこの施策について調べつつ、ツッコミを入れていきます。
その前に、やることあるでしょ?
概要としては、少子化対策の一環で3人以上の子どもを持つ世帯に対し、所得制限を設けずに大学の授業料を2025年度から無償化するというもの。
だけど無償化と言っても完全無償化ではなく、国公立大学の場合、授業料約54万円と入学金約28万円、私立大学の場合、授業料約70万円と入学金約26万円が支援の上限となります。
さらに第一子が大学を卒業、就職して扶養から外れた場合などは、子どもが2人とみなされ、ほかの子は対象外になります。
卒業後に大学院に通うなど扶養から外れなければ、ほかの子は対象のまま。 無償化するには、3人全員扶養していなければならないのです。
もう、これを読んだだけでどこから突っ込んでいいのかわからないくらいツッコミどころが満載。さすが「異次元の少子化対策」です。
まず聞きたいのは「なんで3人?」というところ。想像するに、夫婦ふたりからふたりを生み出せばプラマイゼロ、3人目から世の中の人数が増えるとかそういう計算なんでしょうけどね。
でもいま、子どもを産まない人が増えているなか、いきなり「3人産めよ」というのはかなり飛躍が激しい提案なんじゃないかと思うんです。
わが家は子どもがひとりだけですが、それでも生活は子ども中心になります。
子どもにかかるお金は大学云々の前にも、小さいころには習い事、中学からは塾だのなんだのと教育費にかかるお金もえげつないですし、食費や子どもがほしがるものの価格も年齢が上がるにつれて上がっていく。
子育ては、手が離れると金がかかると言いますが、現在高1の息子を育てていて「こんなに金かかるんかい」と驚くほどバンバンお金が飛んでいきます。
私立の学校に行ったって塾は必須。塾代もバカになりません。
うちは部活をしていませんが、部活に励んでいるお子さんの話を聞くと、サッカー部で3カ月に一度は穴が空くスパイクがウン万円、ユニフォーム代、試合の遠征に伴う交通費、合宿費用、そして試合の後に友達と行く飲食費などなど…。聞けば聞くほど恐ろしい。
ひとりでもこんなにかかるのに、3人となれば、全員分の食費に洋服代、そしてそこそこ広い住居など必要なものがさらに増えます。
そもそも少子化って、3人産むとか以前に「子育てしにくい世の中」とか「ひとりでさえ育てられない不安」から来ているものじゃないんですかねぇ。
さらに、必死こいて育てている子どもの「大学の費用」を補助してくれるそうですが、大学に行くには塾が必須。
塾に行かずに大学受験している人ってほとんど聞いたことがない。その前の高校受験だって実質塾頼み。だからいくら学費を補助してくれたって、塾に莫大なお金がかかってしまうわけです。でもそこは面倒見てくれないわけでしょ。
もういまや受験は情報戦で、「いかにいい塾に入れるか?」から戦いは始まっていて。塾なしで大学に行かせること自体がなかなかのハードル。岸田さんは塾に行かなかったのかしらねぇ。
さらによく見たら、3人とも扶養家族じゃないとこの制度って適用されないらしく、4年生の大学を第一子が卒業してしまったら適用されなくなってしまうのだとか。
ってことは3人とも扶養家族でいるためには、ほぼ年子でなくてはいけないってことですよね。なんなら三つ子?
それどころか第一子が高校出て専門学校に行って就職してしまったら扶養から外れるわけで、その時点で大学無償化の恩恵は受けられないとなると、本当に限られた条件でしか補助が受けられない。
だいたいね、3人も子どもを産んで、3人とも大学に行かせようなんて心意気のある家は、それなりの経済力とリテラシーがあるわけで、たしかに3人とも私立はきついから、できれば国公立に行ってよみたいな話はあるかもしれないけれど、相当ニッチなパターンじゃないかなと思うのです。
そこをピンポイントで救うより前に、できることってあるんじゃないかなと思ってしまいますよね。
そしてこの「3人」という縛り、ひとりっ子のわたしは3人お子さんがいる人によく言われましたが、「そもそも3人産んでこそ一人前」という古い価値観に基づいた考え方なんじゃないかと思うんですよね。
よその家が何人子どもを生もうが勝手だと思うのですが、ひとりっ子の我が家はよくどや顔で「ああ、あなたの家はひとりっ子だからねぇ」と、ちょっとうえから目線で言われたりすることが割とありました。
子どもの多さで人を評価するような人には近づかないようにしていましたが、「子ども3人」って、なにかと出てくるキーワードだったんですよね。
そもそも、本当にそれを必要としている人がいるのか?それをすることで、本当に少子化対策や子育て支援になるのか?という議論って、国会でされないんでしょうかね。
だいたいの場合へんちくりんな制度になっていて、いつまでも「こりゃ助かる!」ってものが出てこないのが残念すぎますよね。
お金の補助ももちろんとても助かるんですが、お金は働けばなんとかなるものでもあります。
産む気になるかどうかって、そもそも子育てしながら働けるかとか、この不安定な世の中に子を産み落としてしまっていいのか、という不安だったりが原因だと思うんですよね。
それって、電車内で泣き止まない子どもをあやすママに向けられる冷たい視線だとか、うるさくしたら出ろというファミレスとか、そういう「空気感」の問題じゃないかと思います。
金銭的なものもありがたいけれど、もうちょっとみんなが必要としているものを精査してほしいし、時間はかかると思いますが、さらにそのうえの「子育てに冷たい空気感をなんとかする」という部分にも目を向けてもらいたいです。
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