「母親のしつけが悪いから」義母の言葉
「ところが、義母は明らかに不機嫌そうな顔で『せっかく買ってきたのに。私の気持ちは無駄なわけ?』と大きなため息をつきました。それを見て娘がまた怯えた顔をするので、娘にも義母にも申し訳ないと思いながらまた『本当にすみません』と謝りました」昌子さんは顔をしかめて言いました。
客観的に考えれば、一方的なプレゼントなら受け取ってもらえない可能性もあることを無視しているのは義母のほうで、きちんと断る昌子さんの姿を否定するのは筋が違います。
それでも、娘のためにとお金を出してくれた気持ちを考えるから、昌子さんは義母に謝罪を続けました。
これを見た夫も、「母さん、気持ちはうれしいけど◯◯の好きな服を着せてあげたいから」と静かに伝えたそうです。
それがかえって義母の心を悪く刺激したのか、「人の好意は素直に受け取るのが常識じゃないの?あなたたちは子どもにどんな教育をしているの」と、さらに攻撃的な言葉をぶつけてくるのが昌子さんはつらかったと言います。
何とか場を収めなければと思った昌子さんは「こちらの服はありがたくいただきます。入学式以外でも着ることができると思うので…」とまた頭を下げました。
しかし「入学式に着るために買ってきているのよ!?失礼なことを言うのね」と義母は強い口調で返してきて、「買ってきたって、こっちに相談もなく決めたのは母さんだろう」と夫が気色ばんだ様子で答えました。
それを見て、義母の口から出たのは「まったくもう、母親のしつけが悪いからこんなことになるのよね」という、昌子さんを正面から傷つける言葉でした。
優先しないといけないのは誰の気持ちなのか
「頭が真っ白になったというか、そこまで言われたことはなかったのでショックで体が固まりました。私のしつけがいまの状況にどう関係するのか、娘もそこにいるのにどんな気持ちになるか、義母は本当に自分のことしか考えていないのだなと思いましたね…」
そして、娘さんは泣き出してしまったそうです。自分のせいでこうなったのは雰囲気でも伝わるかもしれず、謝り続ける母親に、祖母に怒りを見せる父親の姿は、子どもにとって大きなショックではないでしょうか。
それを目にした義母は白けたように黙り、昌子さんは「絶対に義母の言いなりにはならない」と決めました。
「お気持ちはうれしいですが、こちらは受け取れません。私のしつけが悪いと思うのなら、今後はこの子についていっさい関わらなければいいですよ」と言い置いて、娘を連れてリビングを出たそうです。
泣きじゃくる娘さんに「大丈夫だからね」と声をかけながら、昌子さんが考えていたのは「誰の気持ちを優先しないといけないのか」でした。
「義母の気持ちは本当にありがたいと思うし、わざわざ買ってきてくれたのもうれしいです。でも、入学式に出るのは娘であって、本人が自分で服を決めたいと言うのならそれを尊重するのが親の姿勢ではないでしょうか」
本当にこの子のためを思うのなら購入する前にこちらの意思を確認するのではと昌子さんは考え、それは後で夫からも「俺もそう思う」と言われました。
義母の好意を完全に無にするのではなく別の機会で着ることも提案しているのに、あくまで入学式でのことにこだわるのは、義母の都合でしかありません。
自分の気持ちが通らないことを昌子さんのしつけに問題があるとするのは、どう考えても無茶な言い分でした。