「無意味な作業」を「無償」でやってあたりまえの世界
そんなこんなで役員は1年で終わりましたが、息子の通っていた学校は人数が少なく、2クラスずつしかなかったため、役員ではなくても年に2回なにかしらに参加してくださいと手紙が来ていました。
そのなかでわたしが参加することにしたのが、「ベルマーク委員」。
知ってますか?マヨネーズとかの袋の隅っこに小さくくっついている、ベルの絵。スーパーとかで収集箱とかもありますよね。あれを切り取って溜めて送ると、学校用品がもらえるらしいんです。
スーパーに設置した箱や学校で集めたベルマークを、点線に沿ってチョキチョキきれいに切り取って、点数ごとにわける作業。
ベルマークって、商品によってついてる点数が違うんですよ。さらに商品ごとにも分けなくちゃいけなくて、合計100種くらいに分別する必要があるんです。
毎年6月くらいに、20人くらいのママさんがハサミをもって集合し、育児の愚痴を言いながら数百枚のベルマークをチョキチョキ切る。そして卵パックを小分けケース代わりにして、点数ごと、商品ごとに分けていく。
3時間くらいぶっ通しでやります。脳みそから湯気出るし、なかなかに目も疲れます。
そして秋には別の部隊が「ベルマーク集計」の作業をします。
今度は点数別、商品別に分けられたベルマークを10枚ずつセロテープに貼り付けて、指定の用紙に貼り、何点か計算をする作業。
マヨネーズの袋みたいなビニールで、1センチ角あるかないかのものをセロテープに貼るってこれまた骨の折れる作業なんです。
こちらもぶっ通し3時間くらいの作業。これでやっとベルマークの商品交換に出せるというわけ。
このベルマークで何がもらえるか聞いてみたら、リレーのタスキだとか、バスケットボールだとか学用品がもらえるらしい。結構いいものもらえるんだなぁと感心しつつも、ベルマークの「変わらなさ」にも驚いてしまったわたし。
わたしが小学生だった35年前から何も変わっていないじゃん。いまならベルマークじゃなくて、QRコードでもつけておけば、スマホで読んで集計するだけで済むんじゃないのかなぁ。
システム開発にお金がかかる?それを言うなら全国津々浦々のわたしたちの無償労働にお金払ってほしいよね、と思ってしまう。
要はPTAってやっぱり「無償であたりまえ」の世界なんだ、ということになります。
子どもがお世話になっているのだから、何かすることを拒否するつもりはないんです。だけど「こんなことやって意味あるの?」という仕事に駆り出されるのは気分よくないですよね。しかも無償。
なくせること、改善できることはいろいろあるのに、そこまでする気力もない。一度できた仕事をなくすのは、おそらくとても労力がいる話で、前例をそのまま踏襲してきたら35年経っていたという感じなのだと思います。
主婦(主夫)の仕事って、家事とか育児とか目に見えてお金を生み出す仕事ではないので、ほかのことも「タダ働きでオッケー」と思われがちなのでしょうか。
主婦(主夫)の時間も、会社員の時間も同じく貴重な時間です。
「PTAは育児の一環」と言われればそれまでですが、普通にパートをするくらいの労力がかかっているのに、無償で当然、しかも「意味あるの?」というな仕事をやりたいって人は本当に少ない。できれば避けたいと思うのが、自然じゃないかなと思います。
わたしは「学校に慣れたい」「知り合いを作りたい」という他の目的があったので積極的にやりましたが、ほとんどの人が「やりたくない」と思っています。
年度初めの保護者会では決まるまで帰れません状態で、嫌な沈黙が流れるのも、やりたくない人がほとんどということの証拠ですよね。
わたし自身は、息子が小学校のころは専業主婦だったので時間の都合もつきやすかったのですが、一緒に役員をやった人のなかにはフルタイムワーカーのママもいて、有休休暇を取って役員仕事に参加している人もいました。
それを見て、正直「こんなことに大事な有休使いたくないよな」と思ってました。
「みんな忙しいんだから、フルタイムって言い訳は通用しない」とか言う人もいますが、いやほんと勘弁してくれって思っちゃいますよ。
やるならやるで全部をZoomで完結できるように文明の利器で負担を軽くしたり、わたしが見たようなサクラだらけの微妙な行事や、誰が読むのかわからない手紙をなくそうよ。
…と思うのだけど、それをやる人がいない。「なくしましょう!」って取り組む人がいない。だってみんな関わりたくないんだもん。
これまで取り組んできたものをなくすことに反対する人も結構いるだろうし、1年我慢すれば終わるのだから、その苦労を背負ってまでPTA仕事を整理しようという気概のある人はなかなか出てこないよね。その仕事でさえ無償だろうし。ごめん、わたしも嫌。
でもそうやって、よくも悪くも「変わらない」ままどこまでいくんでしょうか。
息子がもしも結婚して子どもができて、わたしの孫が小学生になっても、まだ似たような制度が残ってて、相変わらず形だけの講演会とか、形だけの手紙発行とかやっていそうでうすら寒いです。
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