居づらくなる社内
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タイミングからして、その男性社員があやしいということは真由美さんもすぐに考えついたそうです。
噂が流れているのは男性の社員たちの間だけで、女性の同僚たちは巻き込まれていないことに、「何らかの意思を感じました」と真由美さんは話します。
あるデザイナーの男性から「いま付き合っている人、いるの?」といきなり不躾なことを聞かれたり、「休みの日はどこも行かないの?」とプライベートを探る質問をする男性がいたり、「男たちの間でネタにされている自分」が想像できたという真由美さんは、だんだんと出社するのも嫌になってきたとのこと。
「同僚の友人と、『私たちにこんな噂を振ったら否定されて終わるとわかっているから、男同士で盛り上がっているのかもね。気持ち悪い』と話していました。営業部で女性は私だけというのも余計につらくて、業務の話をしているのに『男で大変な思いをしていると仕事にも影響するよね』とか全然関係のないことを言われたりして、本当に悲しかったです」
例の男性はどうしていたかというと、そのときちょうど関わっている案件がなかったせいか、社内で姿を見かけることが少なく、話しかける機会を持てなかったそうです。
それでも真由美さんが「この人が噂を流しているのだろうな」と感じるのは、廊下で顔を合わせると慌てた様子で通り過ぎる姿で、以前は同じ時間に出社していたのに向こうは変えていることも、真由美さんに追求されるのを恐れている可能性がありました。
「振られた腹いせにそんな噂を流したとしても、バレてしまえば大恥をかくのは自分ですよね」と真由美さんに聞くと、「そこまで考えられないのが幼稚というか、仕事でも自分の感情が最優先で動くところがあって、後先を考えずにやっているのだろうなと思いました。男性社員の間で私を孤立させれば、居づらくなって辞めるだろうとか考えていたのかもしれません」と、悔しそうに唇を噛む真由美さんでしたが、救いの手はすぐに差し出されました。
現状を変えるきっかけ
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「営業部の前は総務で事務の仕事をしていたのですが、そのときの上司がコンプライアンスにすごく厳しい人で、『社員の個人的な問題を仕事に持ち込むのはマナー違反』と何度も口にしていました。その人に呼び出されたときは、ああもうダメだと思いましたね…」
こんな噂が流れる自分は社員として失格とでも言われるだろうかと思っていた真由美さんでしたが、その上司は「君について変な噂が流れているのは知っているよね?デザイン部の◯◯が発端らしいところまでは追えたのだが、彼と何かあったの?」と静かな口調で尋ねてくれたそうです。
◯◯とは例の男性デザイナーで、「そこまで掴んでから私に事情を聞いてくれたのだ」と感じた真由美さんは、正直に男性から告白されたが断ったこと、その後業務で支障が出たため「きちんとしてほしい」とお願いをしたこと、それからこの噂が広まったことなどを話します。
真由美さんの言葉を最後まで聞いてから、「以前もそんなことがあったのだけど」と上司は前置きして、「噂が本当かどうかは問題ではない。噂は必ず言い出した人間がいて、社内でほかの個人のことをあれこれと面白がるのはマナー違反なんだ。急にこんな噂が流れてきておかしいなと思ったが、◯◯が言っているのを聞いたと女性社員から報告があった。そんなことがあったのか、大変だったね」と淡々と話してくれたそうです。
「この人は、たぶん私の仕事中の様子などを営業部の上司に確認していただろうなと思います。ミスはするけど一生懸命に私はやっているつもりで、クライアントから苦情が来たこともありません。そういう積み重ねが今回は効いたのかも、とふと思いました」
最初からこちらを責めるような姿勢ではなく正面から事情を確認したいと思ってもらえたことが、このネガティブな現状を変える最大のポイントだったのかもしれません。