「ストレクチャー」がある犬の飼い方
こちは、おそらく感動する動画かもしれません。シェルターから引き取った怖がりな犬です。
この犬、人に懐かず、ベットやソファーの下に隠れて出てきません。
人間は、時間をかけ、毎日少しづつ、ソーセージを使って犬が自ら出て来るのを待ちます。
でもこれは言い方を変えれば「おびき寄せ」です。犬を罠にかけるときにも、これやりますよね?
さて、辛抱強く、リードを掛けれるようにはなりましたが、リードを付けた瞬間からソーセージを食べません。信頼関係が壊れた瞬間です。
騙し騙し、リードを急いで付けちゃったもんだから、犬は不快に思っています。
そしてやっと窓際まで連れて行くことができて、外に連れ出しました。リードを外すと走り回っていますよね?
この動画をみて、エモーショナル(感情的)になる人は、犬を誤解している人です。
辛抱強い人間の努力=愛、犬がやっと信頼して外に出て走れるようになった!めでたし、めでたし…。
ところが最後、家に入らない犬ができあがり。オチを見てくださいね。
これが「ストラクチャー」がない犬の飼い方です。
犬は人間社会になれていなければ、当然怖がります。野犬だった犬がいきなり都会に譲渡されると、怖いものだらけです。
犬が慣れるのを待つために、犬にじっくりと時間をかけ、犬が動いてくれるのを辛抱強く待つ…。
一見「素晴らしい愛情」のように見えますが、私からみると、これはとても犬に残酷なのです。
人が犬に教えるべきこと、何が「Yes」で何が「No」なのか…これらを全く教えて育んでおりません。教えて、育む…これが「教育」です。
先ほどの怖がっている犬を「可哀想」と見る人は、犬との信頼関係、BONDを作れない人です。
ソーセージを使い犬をおびき寄せる、人間である飼い主の男性は一切、自分が犬に対して「どうしてほしいか」を伝えていない。
だから犬はずっとビクビクして、「信用してはいけないのでは?」という警戒心が見受けられますよね?
そしてリードを付けられた途端、「あっやっぱこいつ、信頼できない」って目をしていませんか?
人を信用しない犬、怖がる犬…こういう犬にはエモーショナル(感情的)になって、犬が嫌がることはしないでおこう、犬から嫌われないように努力しようなんて思う人は多いでしょう。実はそれ、間違っています。
この犬もシェルターから引き出したばかりの犬。外の世界を知らない、野犬です。車に乗せて引きだしたものの、車から出てきません。
隠れようとする犬に、「No」そして「Come」を言います。出てきそうになったら声を変え、テンションをあげます。
引っ込んだら、リードでコレクションをいれて「No」です。1分ほどで車から出ました。決して無理に引っ張っておりません。きっかけを与えているだけです。
リードをつけて外に出すまでにかかった時間が長い分、犬は「どうしていいかわからない」「怖い」が長いということ。犬に掛かったストレスはこちらの方が短いのです。
シェルターから出したら、速攻で公園につれていってリードでの散歩を開始します。
逃げ出さずにこうしなさい。隠れる必要はなし!私に任せなさい!座っていなさい!伏せして待ちなさい!これらを使います。コマンドを教えていなくても、その場で導きます。
そしてもちろん、スケボーや自転車、子どもの動きにいちいちパニックになるこの犬を私が守ります。私が盾になって、この子を後ろに歩かせるのです。
この犬はすぐに私に懐きました。むしろ、私以外には懐くのに時間が掛かったそうです。
怖がりの犬は、何を求めているか考えてください。あなたが怖がりだったとしたら、どういう人とお化け屋敷に入りたいですか?
誰も知らない土地で、右も左もわからない会社で、「好きにしてね」と言われてくつろげますか?
あなたが見知らぬ人にどこかに連れていかれ、怖くて隠れているとき、目の前に食事が出されたら、その見知らぬ人が出した食事を食べますか?
隠れている場所をのぞき込まれたらどう感じますか?
その人を信用するには、その人がどういう態度を取ってくれれば、信頼しますか?
どうしたらいいのか悩んでいる子ども、人、犬に対して、「こうしたらいいのよ」を教えることで、「大丈夫よ!」とカラカラ笑っている人がいれば、安心しませんか?
「ストラクチャー」を作るのは、人間の役目
犬をトレーニングするのではなく、生活を共にしながら「ストラクチャー」を作るのは、人間の役目です。
引っ張り、拾い食い、犬に吠えかかる、いたずら…など、困る問題があるということは、必ず「ストラクチャー」に問題があります。
だから私は「拾い食いを止める方法」など教えませんし、教える必要はないと思っています。そういう方法より、「犬と繋がっていない」ことが問題なのですからね。
犬に問題がある、困っているという方、結局「犬が言うことを聞いてくれない」ということですよね?
「犬」という動物を知らない方が、たくさんの「トレーニング法」を試していらっしゃると思いますが、方法や道具で「問題を治そう」という意識の方、注意してください。
失敗から学ぶのは結構ですが、その失敗で怪我をする犬、人がいることを念頭に入れておいてください。
あなたの摸索の時間が長い分、犬はストレスにさらされているかもしれませんよ。
独学で「犬」を学ぶには、相当の時間が掛かりますし、犬はどの犬種も同じではありません。「頑張ります!」の前に、知識を付ける方が先です。
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