「考える」とは、何が問題なのかを特定すること

image by:Unsplash
人は誰でも悩みます。あれこれ悩みます。企画がうまく進まない、上司や同僚、家族とうまくコミュニケーションできない、仕事がつらい、給料が低い、やりたいことができない、体力がない、将来が不安など、きりがありません。
ところが、悩んでいる限り、いくら悩んでも、考えはなかなか先に進みませんし、考えが深まることはほとんどないのではないでしょうか。悩むだけのことと、まともに考えて対処することには大きな差があります。
ものすごく悩んだとしても、何をやっても無駄だと思って何もしなかったり、今の状態に苦痛を感じているだけだったり、右に行くべきか左に行くべきか逡しゅん巡じゅんして必要な問題解決が遅れるだけだったりします。考えているつもりで、足踏みしているのが現実ではないでしょうか。
もちろん、挽回できない会社の業績不振、深刻な病気等でどうにもならないことはあります。
ただ、それ以外で、第三者から見て悩むほどのことではない、あるいは対処する方法がいくらでもある、という場合でも非常に多くの人が悩み、嘆き、何もしない、ということがあまりにも多いと感じています。
大変にもったいないことですし、残念なことです。もう少し何とかできるはずと思っています。
悩んでいる人の中には、「こうしたらいい、ああすべきだ、ということは自分もしっかり考えている」と言いたい人も多いと思います。「自分の悩みは人にはわからない」「どうにもならないから悩んでいるんだ」ということだと思います。
しかし、本当に悩んでいるだけではなく、考えて対策を取ろうとしているでしょうか。では、「悩むことと考えることの違い」とはいったい何でしょう。
私は、考えるとは「問題を特定すること」だと考えます。
目の前の表面的な状況の中で悩んだり、愚痴を言ったり、思考停止したりせずに、そこに本質的な問題を見出すことなのです。
例えば、
- 夫、妻とのコミュニケーションがとげとげしくなった → お互い何をしたいのかが共有、合意されていない
- 彼氏、彼女とデートのたびにケンカする → お互いに何を期待しているのかが共有、合意されていない
- 友達が不平不満ばかり言い続ける → 友達が傷つきやすく、依存心が強すぎる
- 会議にとられる時間が非常に多い → 会議の議題とアウトプットが事前に決められていない
- 資料・書類の作り直しが多い → 上司が何を求めているか部下に明確に伝えられていない
- 同僚とのコミュニケーションがどうもうまくいかない → タスクの目的が共有されていない
- 商品企画チームと開発チームの連携が取れない → そのプロジェクトの目的が共有されていない
などということになります。目の前の表面的な問題に対して、より本質的な問題が何かを考えてみる、ということですね。

image by:Unsplash
最初の例で、「夫、妻とのコミュニケーションがとげとげしくなった」という状況では、こちらの気分が悪くなり、相手に文句を言いたくなります。相手は何か気にいらないことがあるからとげとげしいわけで、文句を言われるともっと気分が悪く、さらに悪化します。
そうすると「売り言葉に買い言葉」状態になってしまいます。
そうやってしまう代わりに、より本質的な問題が何かを考えてみると、「お互い何をしたいのかが共有、合意されていない」ということがわかります。そうすれば、
- お互い何をしたいのか、相手に整理して伝える
- 具体的には、「絶対にやりたい」「できればやりたい」「どちらでもいい」「できればやりたくない」「絶対やりたくない」のどれなのかに分け、自分の好みを伝える
- その上で、二人で一緒にやるべきこと、一人だけでやるべきこと、どちらもやるべきでないことを合意する
という問題解決ができます。これで初めて、悩むだけではなく、考えて、問題解決する、という方向に一歩踏み出せますね。
「表面的ではない、本質的な問題は何かを考える」などと言われても、そう簡単にはできないよ、と思われるかもしれません。それを手助けするのが「A4メモ」です(詳しくは、『世界一シンプルなこころの整理法』(朝日新聞出版刊)をご覧ください)。
- image by:Unsplash
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。