前回の記事では、「夫の姓」から「妻の姓」に変えた理由をお伝えした。
夫婦の姓を変えるには、「やむを得ない事由」と「裁判所の許可」が必要。そこに、姓が変わったことによって自分のアイデンティティが壊れてしまう、というような心の問題はまったく考慮されていない。それが私は一番大切な部分だと思うのだが…。
姓を変えることの難しさにぶち当たった私たち夫婦は、夫が私の実父の養子になるという手段で、夫の姓から妻の姓に変えた。今回は、その手続きで私が覚えた違和感をお話ししよう。
養子縁組の手続きはとても簡単だった
養子縁組の手続きは、婚姻届を書いて提出するくらい、正直簡単だった。
父が役所から書類をもらってきて私たちの自宅まで郵送してくれた。そこには、養子縁組届と、記入例が入っていた。どうやら、証人も必要のようだ。
証人は私の叔父と夫の実父にお願いして、それぞれに住所(現住所と本籍地)・氏名を書いてもらい、印鑑を押してもらった。それから、夫が筆頭者の戸籍謄本も必要らしい。
手続きは、父の本籍地のある役所で行わなければならない。記入して郵送してくれれば提出しておくと父は言ってくれたが、間違いがあるといけないので、みんなで役所の窓口に行って教えてもらいながら記入しようということになった。私も、自分の実印と、身分証として免許証を用意した。
いよいよ養子縁組の手続き開始
養子縁組の日取りを決めて、当日実家で両親を車に乗せ、いざ役所へ。
私の実家がある地方では雪が降るような時期だったので心配していたが、私の姓が「藤原」に戻ることを祝うかのような快晴。「祝福されているに違いない!」とスピリチュアルなことを思いつつ、心は浮き足立っていた。
窓口では優しそうな女性職員が対応してくれた。どうやら父と顔見知りらしいく、親しく話していた。年齢は、私よりちょっと上かな、というくらい。
さて、いよいよ手続き開始。父と夫が椅子に座り、必要事項を記入していく。「ここに旦那さんのお名前と、ご住所を〜」「入籍する戸籍の筆頭者の名前を〜」と、滞りなく進んでいく。
夫は身分証の提出を求められ、免許証を渡した。私と母はその様子を後ろから眺め、自分たちの出番を待つ。印鑑も身分証も持ってスタンバイして、いまかいまかと待っていた。
「では、奥様こちらに〜」ついにきた!いそいそと夫に代わって椅子に座る。
「こちらにお名前を書いていただいて〜、その横に押印を〜」。はいはい、名前ですね。お安い御用です!さて、お次は身分証の提出ですか?
「はい、ありがとうございます。こちらで大丈夫です」。
…は?これで終わり?間違ってない?あとで「奥さんの身分証のコピーないじゃん!」って上司に怒られない?
免許証を持ってポカンとしている私をみて、窓口の彼女はちょっと苦笑した。