長い間夫婦として過ごしていても、ずっとラブラブでいられるふたり。
しっかりと愛情で結ばれているふたりにも「初めて」はあり、恋人時代の初デートや入籍後最初のお出かけなどはどんなものだったのでしょうか。
お互いを尊重し信頼しあう気持ちはいますぐには育たないからこそ貴重で、それを理解しているのが円満な夫婦。時間をかけて慈しむ関係の最初の様子はどうだったのか、エピソードをご紹介します。
ずっと「同じ」だった(結婚歴20年)
「夫と最初に会ったのはお見合いでした。
仲人さんから『絶対に合う』と言われてドキドキしながら足を向けたレストランでは、私と同じくらいこわばった顔の夫がいて、お互いにしどろもどろで自己紹介したのを覚えています。
その日は仕事や趣味や休日の過ごし方など無難な話題ばかりだったけれど、帰り際に『次は…』と言われたときはドキッとして。私も夫に好感を持っていたので、その場で約束をしました。
顔合わせじゃない『普通のデート』になると思うと前の日の夜は眠れませんでしたが、次の日、待ち合わせの場所に先に来ていた夫も明らかに寝不足な表情。
私がつい『昨日は眠れなくて』と言ったら『同じですね』と笑ってくれて、すごくホッとしたというか、緊張が解けました。
喫茶店に移動してからは『デートの前日は何をして過ごすか』で盛り上がって、前回よりくつろげるというか、親近感が深くなったと思います。
夕方になってそろそろ帰ろうかとなったときに、『仲人さんに合いそうと言われていたけど、本当にそう思います』と夫が話してくれて、『私もそうでした』と返してふたりで笑うのが楽しかったのをいまでも覚えています。
お付き合いが進み結婚してからも、『この人は私と同じ感覚』っていうのが心強かったですね。
いまも穏やかなのは、最初に安心できたのが大きかったと思います」(女性/48歳/専業主婦)
ふたりとも寝不足の顔で登場する初デート、それが嫌悪感ではなく「同じだ」という安心感につながるのが、相性のよさ。相手に心を開くきっかけとしてこんな共感があると、信頼が育つのも早いですよね。
夫婦になってからも幸せな関係が続くのは、最初に芽生えた安堵が消えないからです。
初デートでの感覚は、その後のつながりを導く一つの証ともいえます。
「あまり喧嘩をしないのは、お互いの考え方や価値観を知っているから」とこちらの女性は話していましたが、感覚が似ていることは歩み寄る勇気も与えてくれます。
配偶者の気持ちを尊重する姿勢が、最初から持てているのかもしれませんね。
「はしゃぐ妻」を見て…(結婚歴11年)
「会社の取引先にいた妻を好きになり、僕から告白して2年ほど付き合い入籍しました。
正直にいえば、仕事でも顔を合わせるし恋人として過ごす時間が増えて慣れていくし、結婚したときは新鮮味のようなものはあまり感じなかったです。
それをふたりで『落ち着いているってことだよね』と話していたのですが、あっと思ったのは入籍して初めてのデートのとき。居酒屋の個室を予約したけれど、話す内容は相変わらず仕事や新しく買いたい家電の話題などで、新婚の雰囲気ではありませんでした。
でも、お酒が進んで酔った妻が、オーダーを運んできた店員さんに『私たち、結婚したんです!』と左指の指輪を突然見せて。
店員さんは妻に面食らいながらも『おめでとうございます』と笑ってくれて、妻も『だから今夜はお酒がおいしい』と言うのがおもしろかったですね。
ふたりで選んだ結婚指輪を人に見せびらかす妻は可愛らしくて、こんなふうにはしゃぐ姿を見るのは初めてでした。僕も『ああ、夫婦になったのだな』と急に自覚して、しみじみと幸せで。
いまは子どもも産まれてすっかりパパとママになったけど、それでもふたりで晩酌をするときは、あの夜の誇らしげに左手を掲げた妻をふと思い出します。
結婚してよかった、とそのたびに感じるのも、妻のおかげなのですよね」(男性/40歳/営業)
恋人関係になってからも仕事のつながりで会うし、一緒に過ごす時間が長いまま夫婦になるとその実感が薄いのは、よくあることです。
関係の変化を当たり前のように受け止めるのは、安定した心が伝わる反面「こんなものなのかな」と一抹の寂しさも生まれるかもしれません。
不意に見せた「結婚をはしゃぐ姿」に配偶者の本心があり、その衝撃は忘れられない新鮮さと幸せを残します。
家族が増えたとしても、ふたりきりになると思い出せるのはそれがうれしかったからです。
夫婦になり、いまの生活があるのは当たり前では決してない、と思うとき、男性のなかで感謝と愛情が強くなります。何年経ってもあの日の妻を思い浮かべる幸せは、まさに特別といえます。