離婚したいけれど、配偶者と話し合いがまとまらなかったり条件で折り合いがつかなかったりするとき、利用できるのが家庭裁判所で開かれる離婚調停です。
双方の承諾で叶う協議離婚と違い、家庭裁判所で委員を交えながら離婚の成立を目指す調停は、思い通りに進まない状況にストレスを感じることもあります。
その結果、離婚した後でも元配偶者へのわだかまりが消えず、どこかで溜飲を下げようと嫌な関わり方をする人もいます。
離婚調停後で元配偶者に起こされるトラブルには何があるのか、実際のケースをご紹介します。
元夫の引越し先は…(女性/40歳/薬剤師)
「夫の浮気が原因で離婚を決め、申し出たものの『ただの遊びなのに大げさな』と鼻で笑われ、一人娘を連れて家を出ました。
相手の女性はわかっているものの肉体関係の有無までは特定できず、不貞行為の慰謝料は請求できないと相談した弁護士に言われましたが、それでも、そのときは『夫の浮気が原因で離婚した』という結果にこだわっていたのを覚えています。
娘とふたりで契約したアパートに引っ越し、それから家庭裁判所に離婚調停を申し立てましたが、失敗だったのはこちらの住所を隠さなかったことです。
担当してくださった職員のかたに『非公開にもできますよ』と言われたのですが、私をしたに見てまったく興味を示さない夫が何かしてくるなんて想像できず、住所は公開にしました。
家を出てから夫は『近所の人に噂されている。恥をかかせるな』と怒りの電話が何度もかかってきましたが、『浮気を認めて謝罪するまでは帰らないし、調停も進める』とはっきり答えていましたね。
同じ市内に住む実家の両親にすべて話したら離婚について賛成してくれて、忙しいときは娘の送迎を代わるなど同居していたころの夫よりずっと支えてもらいました。
両親の応援もあって調停中は何とかメンタルを維持することができたのですが、調停委員から聞かされる夫の言い分は『浮気ではなく遊び。謝るようなことではない』『妻の心が狭いせいで娘とも会えなくなっている』と自分の都合ばかり、本当に腹が立つし悲しいし、つらかったですね…。
それでも、調停委員のふたりから『奥さんに嘘をついてその女性と食事に行き、日曜日も女性を誘ってドライブに行くことが浮気でなくて何なのか』『奥さんが逆のことをしていたら浮気とは思わないのですか?』と問い詰められた夫が、渋々非を認めたことを伝えられました。
でも『娘を連れて同居に戻るなら謝る』と夫は譲らず、結局は自分が悪いとは思っていないことがわかり、もう謝罪は諦めて離婚の成立のみを目指しました。
私の意思が変わらないことを知り夫も離婚を承諾し、財産分与と養育費でも揉めましたが、何とか離婚が成立したのは半年後です。
娘や両親と一緒に『やっと自由になれた』と喜んだのですが、元夫の異常さを実感したのはそれから1カ月後。面会交流から帰った娘から『パパ、すぐそこのアパートにいるよ』と教えられたときでした。
なんと元夫は、私と娘が暮らすアパートから徒歩10分のところに引っ越していました。
どうしてそんなことをするのか、怒りからすぐさま元夫に電話したら『どこに住もうと俺の勝手だろう。離婚したのだから口出しをするな』と昔のように鼻で笑われて、この人は私を苦しめるためにここを選んだのだと思いましたね。
実家の両親は『ふたりでうちに来ればいい』と言ってくれたのですが、それをすると元夫も絶対に近くに来るだろうと思ったし、これ以上両親に迷惑をかけるのも嫌で、まだ引っ越しは考えていません。
いまのところ元夫から接触はないですが、毎日ストレスを感じながらの生活で、離婚後までこんな思いをするなんて…と落ち込みます。
アパートの住所を非公開にすればよかったといまも後悔しています」(女性/40歳/薬剤師)
普通の神経ならそれはやらないのでは…と思うようなことでも、怒りにとらわれると人は何をするのかわからないと実感したケース。
わざわざ元配偶者の近くに引っ越す意図を考えれば、嫌がらせが目的と思うのが当たり前で、離婚後まで自分の存在をねじ込ませる図々しさには恐怖を感じます。
調停では郵送物の発送にいま住んでいるところの住所が必須ですが、相手方にDVなどの問題がある場合は非公開も選択できます。
まともな話し合いができない相手なら、先のことを考えて最初から非公開にしておくのも自分のため。
こちらのケースでは、万が一のことを考えて警察に通報できるよう離婚の過程や調書などを別にまとめて保管しており、いつでも動けるよう両親も元夫の気配に気をつけているそうです。
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