こんにちは。韓国在住6年目、日本語教師でライターのHAZUKIです。在韓ならではの生きた韓国情報をお届けします。
昨年から韓国でかなり話題を集めているのが「2025年入学の医学生を2000人増員する」というニュース。これについて医師協会からは、激しい反対の声が上がっています。
今回は、この韓国医大生増員について、詳しくお話します。
韓国人が抱く「医学部」へのイメージ
ちなみに韓国では、勉強が得意な学生は必ずと言っても過言ではないほど、医学部を目指します。
医学部は韓国で1番人気の専攻で、ドラマ『スカイキャッスル』のような競争が実際に繰り広げられています。
「医師になりたい」というよりは、勉強ができたらから医師になるという人が多い印象です。
しかし、医学部を卒業した多くの医学生は基幹診療科ではなく、美容医療に進むことが多いです。
というのも、「基幹診療科は人手不足で大変な仕事が多いのに収益性が低い」とされており、より収益性の高い美容医療に進む医師が増えているそう。
基幹診療科は病院が訴えられるケースも多く、リスクを避けるために美容医療に進む傾向もあります。
実際、筆者の家の近くの病院を見ても皮膚科、歯医師、矯正歯科、レーシック専門病院はたくさんありますが、一般の病院は少ないです。
基幹診療科は、かなりの医師不足
このように韓国では、脳外科、小児科、産婦人科などの「基幹診療科」が深刻な医師不足に悩まされています。(参考:ニッセイ基礎研究所)
反対に、美容医療分野はすでに飽和状態。医師の数が多すぎると言われています。
かなりバランスが悪いのが、いまの韓国の現状です…。
そこでひとつの対策として挙がったのが、冒頭でお話しした「2025年入学の医学生を2000人増員する」という方法。
この対策については賛否両論あり、医師を増やそうとする韓国政府と、反対する医師団体という対立構造ができあがってしまったのですが、韓国政府と医師団体それぞれが日本の事例を挙げて主張の正当性を強調しています。(参考:レコードチャイナ)
「2000人増加」について医師たちの意見
学生の増員については、医師たちの意見が分かれています。
賛成意見としては、基幹診療科の医師不足を解消するために必要だというものがありました。
特に地方や小さな病院では医師の不足が深刻であり、医学生の増員がこの問題を解決するために不可欠だという意見です。
一方、反対する意見も多い印象。理由としては、医学生の増加が医師の質を低下させる可能性があるという懸念。
教育機関のキャパや実習の質が維持できない場合、未熟な医師が増えるリスクがあると指摘されています。
また、医師過剰により、既存の医師の仕事量や収入が減少することへの不安も…。
特に都市部ではすでに競争が激しく、新たな医師の参入が既存の医療市場を圧迫する可能性があるとされています。
しかし実際のところ、「いままで一生懸命勉強して、頑張って医師になったのに自分たちのブランドが落ちてしまうから…」と考えている医師が多いように感じます。もちろん、そうでない医師もいますが…。
日本の過去の例を参考に
日本と韓国は、いくつかの共通点があります。たとえば、高齢化社会に伴う医療ニーズの増加や、特定の診療科の医師不足などです。(参考:マイナビDOCTOR)
日本では、大学と地域が連携し、その地域で何年間か働くことを条件に奨学金や利息の変換が免除されるケースがあります。
韓国でも、そのようなシステムを導入すべきだという意見があります。
医療のバランスが崩れている現状
今回詳しく調べてみて、以前日本で経験した問題を、ちょうどいま韓国が抱えているように見えました。
韓国に住んでいると、医療のバランスが崩れているのは本当に感じます。
今回の対策がうまくいかなかったら私たちの生活に響く部分なので、これからどうなるのかとても不安です…。
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