結婚すればお付き合いが始まるのが、パートナーの実家です。
身内となるのは義実家から見た自分も同じですが、だからといって義実家の要求をすべて飲むべき…とはなりませんよね。
自分はそう思っていても、義父母たちは違っていたときに、おかしな衝突が起こります。
一方的に都合よくこちらを使おうとする義実家にどう対応したのか、ある女性のケースをご紹介します。
「押しかけ」の多い義母
麻依子さん(仮名/40代)には、結婚して15年になる夫と3人のお子さんがいます。
夫は建築系の小さな会社を営んでおり、麻依子さんはその事務を主に受け持って、いわば二人三脚のような状態で経営を続けているそうです。
「夫は30代になってすぐいまの会社を立ち上げて、一生懸命やっているのをずっと見てきました。大変なときもありますけど、私も自分のすることにはやりがいを感じますね」
穏やかにそう話す麻依子さんは、義実家との距離感にはずっと悩んでいたそうです。
クルマで30分ほどのところにある義実家には、忙しいときはなかなか足を向けられず、夫と同じ会社にいれば自分だけが抜けることも難しいのが実情。
そのせいか、義母のほうから訪ねてくることが多く、それが麻依子さんにはストレスになるときがありました。
「家にいなかったら事務所まで来るんですけど、私が電話対応なんかでバタバタしていても平気で居座るんですよね。私が相手をするまで待ってるんです。空気を読まないというか、自分はここにいて当然って感じで…」
忙しいのは見ればわかるはずで、それでも動かない義母に「すみません」となぜか頭を下げている自分が、情けないと言います。
それでも、ふたりが大変なのを見て「おかずを持ってきたわよ」と助けてくれたり、自分がどうしても手を離せないときは子どもの相手をしてくれたりと、感謝するときも多かったそう。
「押しかけられているとは思うのですが、夫もそんな義母にはそれまで特に文句も言わなかったし、私が何とかできればいいと、そのときまでは思っていましたね…」
義実家とは大きなトラブルもなく、たまに会う義父とも関係性はそこまで悪くなかったと、麻依子さんは記憶しています。
義母に起こったこと
そんな義母に突然降り掛かった災難が、骨折でした。
「いつも行くスーパーの、クルマの輪止めにつまずいて転んだそうです。地面に手をついたときに手首の骨を折ったらしいと、夫から聞きました」
そのときは幸い義父が一緒だったためすぐ病院に行き、処置をしてもらったそうです。
義父から連絡を受けた夫が義実家に飛んでいき、事務所を空けるわけにはいかなったので、麻依子さんは留守番をしていました。
幸い怪我はそこまで酷くなく、腕を吊った状態だけど入院まではしなくて済んだそうです。
骨折は一大事ではあるけれど、入院なんて事態になれば義母たちが大変だろうと、自宅での養生が決まったことを麻依子たちは素直に喜んだそうです。
ところが、義実家から戻ってきた夫から「介護してもらいたいと言い出した」と聞きます。
骨折は右の手首で、腕を吊っている状態なら生活に支障が出る、トイレに行くのも大変な状態で夫の世話なんてできないし、いっそ息子の家で自分の面倒をみてもらいたいというのが、義母の気持ちでした。
「介護なんて大げさだよな」と、夫は義母の要求について返事は保留にしており、それが本当に救いだったそうです。
義母の頑なさ
「夫は自分と私の状況をもちろん知っているし、末っ子はまだ小学生で手がかかって大変だし、母親を引き取るなんてことは無理と、最初から思っていたようです」
その場で断らなかったのは、「自分が一番動揺しているだろうから」と母親を気遣ってのことだったと麻依子さんは思っています。
夫は義母たちに「妻と相談する」と言っており、麻依子さんの気持ちも、夫と同じくやはり「うちでお世話をするのは難しい」の一点でした。
義母の大変さは想像できるけれど、だからといって自分たちにも生活の事情はあり、夫が「弟に話してみる」と言うのを麻依子さんは聞いていました。
ところが、義母の要求はあくまで長男である夫の家で介護をしてもらうこと。
夫は「弟と話せ」と伝えたそうですが、「どうしてもあなたの家がいい」と言われたそうです。
「でも、うちじゃ無理でしょう」と言うのを夫は頷いて、「そもそも介護なんてレベルの骨折じゃないし、こっちも行けるときは手助けをするからと伝える」と、夫は答えました。
それで終わると思っていた麻依子さんでしたが、次の日に義母から電話がかかってきました。
「専業主婦だからラク」?
「『どうして断るのよ!』って、最初から義母は怒っていました。夫と話がつかないから私にかけてきたんだろうなと思ったし、仕方ないと腹を括りましたね…」
助け合うのが身内だと語気を荒くして言う義母に、麻依子さんは丁寧に自分たちの状況を伝えました。
この電話のなかで一番腹が立ったというのが、「あなた、専業主婦でしょう?時間があるはずだけど」という義母の言葉。
「まさか私を専業主婦と思っていたなんてと、本当にびっくりしましたね。義母は、事務所で私が何をしているのかは見ているし、忙しいから子どもの迎えにも行けないことなども理解していると思っていました。それに、専業主婦だって暇なわけじゃないですよね。その考え方にもドン引きしました」
専業主婦だから楽なはずと言い切る義母に、麻依子さんは怒りを抑えながら「専業主婦じゃないです。事務所のなかで、ずっと自分の仕事をしています。知ってますよね?家のこともしないといけないし、息子たちの宿題も見ないといけないし、全然楽ではないですね」と、正面から否定したそうです。
義母は、麻依子さんは息子の仕事を「手伝っている」くらいの感覚だったようで、「知ってますよね?」と言われて黙ったそうです。
「どうしてうちがいいかって、私が暇だから自分の相手をする時間があるし、介護もできるだろうと思っていたようでした」
息子と同じく自分を拒否する麻依子さんを知って、義母は憤慨したまま電話を一方的に切りました。
「面倒を引き受ける」のが身内の役割ではない
自分について、専業主婦という言い方を義母は夫にはしていないだろうと、麻依子さんは思っています。
「たぶん、その言葉を言われたら夫は怒りますね。全く違うので。私が楽をしていると、自分の息子には言わずに私には向けたのだろうと思います」
これも麻依子さんが悔しいと思う理由で、息子の嫁に対する義母の考え方がわかるようでした。
この電話の件を夫に伝えると、案の定「あの人は何も見ていないのか…」と、落胆していたと言います。
それからも、義母は「身内なんだから助けるべき」と夫に言っていたそうですが、「身内であってもできないことはある」と、きっぱりと断ったそうです。
一方的に起こった自分の面倒ごとを引き受けるのが、身内の役割ではありません。
このケースでは、義母の息子である夫自身がこう考えており、自分たちの生活を第一に守る意識があったために、これ以上のトラブルには発展しませんでした。
「うちは自営業で、仕事と暮らしがつながっていることも、夫が状況を把握できている理由かもしれませんが…」と、麻依子さんは振り返ります。
これ以来、義実家とは疎遠になっているそうですが、無理を押し付ける義母には自分も夫もついていけないのが、麻依子さんの現実です。
自分に都合のいい見方しかできない義母とは、このままがいいのかもしれないと、麻依子さんは思っています。
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