結婚すれば始まる義実家とのお付き合いは、できれば楽しいものであってほしいですよね。
しかし違う人間同士ならこちらの努力だけではどうにもならず、一方的に境界線を超えてくるような関わり方をされれば、やはりストレスを感じます。
義実家との価値観の違いはどう対処すればいいのか、ある女性のエピソードをご紹介します。
孫の可愛がり方に差のある義母
愛子さん(仮名/37歳)には、結婚して10年になる夫とふたりのお子さんがおり、慌ただしいながらも安定した生活を送っています。
クルマで30分ほどのところにある義実家とは、愛子さんとしては「スープの冷めない距離」でいたいと考えており、無理にお付き合いはしないことを夫も了解していたそうです。
愛子さんが以前から気になっているのが、孫の可愛がり方に差のある義母でした。
「夫は長男。弟さんがいて同じく結婚しているのですが、うちの次男より2つしたのお子さんがいます。義実家で顔を合わせれば一緒に遊ぶこともあって、弟さんのご家族とは無難なお付き合いができていると思います。
その弟さんのお子さんのほうを、義母はうちの子より大事にするんですよね」
自分たちの前であからさまに態度を変えることはないけれど、こっそり新品のおもちゃを贈っていたり、義弟の家族だけを招いてお子さんにケーキを振る舞っていたりすることは、義弟との会話で聞いていました。
「それ自体は別に気にしない」と話す愛子さんが困っていたのは、自分の次男が持っているものを義母が「もらっていい?」と手を出すことです。
「次男が着ている服やバッグを褒めてくれるのですが、少し経ったら『もういいわよね』って渡すように迫るんですね。もらってどうするのかって、次男の孫にあげてるんです。弟さんのお嫁さんからお礼の電話がかかってきてそれを知って、毎回何とも言えない気分になります」
まだ着ることができる服でも、義母に言われたらこじれるのが嫌で渡していたという愛子さん。
義母がはっきり「ちょうだい」と言わないのもストレスで、「まるで不用品を引き取るみたいな言い方をしてくるのが嫌でした」と、ため息をつきました。
「長男の家族」への義母の考え方
義弟のお子さんばかり可愛がるのはいいけれど、そのために自分たちが何かを我慢するような状態について、愛子さん夫婦は何度か話し合ったそうです。
愛子さんの夫は「母は昔から次男のほうを可愛がっていて、俺には『お兄ちゃんなんだから、我慢しなさい』が口癖だった」と言っていたそうで、いまもその延長なのだろうとふたりは思っています。
愛子さんたちは長男の家族だから、息子と同じ扱いをしてもいいだろうという義母の価値観は、愛子さんも何となく感じていました。
「私たちは大人だからどうとでもできるけど、うちの子どもたちは違うじゃないですか。まだ気に入っているバッグを、義母から『もう飽きたんじゃない?』とか言われるのを見たら、勝手に決めるなと腹が立ちますよね」
子どもの気持ちを無視しないでほしいのが愛子さんの本音で、義実家に行くときはわざと古いシャツなどに着替えさせるのも、何でこんなことをしないといけないのかと情けなくなるそうです。
それでも、夫は「できれば波風を立てないでほしい」と言っており、それは自分たちとこじれたら弟夫婦も確実に巻き込まれるであろうことを予想しているからでした。
ありえない言葉
愛子さん夫婦が義実家と距離を置こうと決めたのは、次男の誕生日プレゼントで買った自転車が原因でした。
「その自転車は義実家で見せたことがなかったのですが、義母がうちに遊びに来たときに庭を見て、『あら、いい自転車じゃない』と言われてはっとしました。まさに『見つかった』って感じで、さすがにこれは渡せない、とすぐに思ったのですが…」
愛子さんは「あの子が自分で選んで、大事にしてるんですよ」とそれとなく先回りをしたつもりでしたが、義母から返ってきたのは「でも、どうせすぐ小さくなって乗れなくなるのよね」と、その気持ちをまったく考えようとしない言葉でした。
「これはまたすぐ『飽きたんじゃない?』って、次男にうんと言わせるかもしれないと思いました」
まだ新品で子どもが気に入っている自転車を、義弟の子どもの元に持っていかれるなど、どうしても許せなかったと愛子さんは言います。
悪い予感は的中し、それから2カ月ほど経ったあるとき、愛子さんは義母から「あの自転車、もらってもいい?もういいんじゃない?」といつものように聞かれたそうです。
「いえ、うちの子が乗るので」ときっぱり断ったのは、何でも義母のペースで持っていかれることにいい加減腹が立っていたのが理由でした。
「『次男が自分で選んだ大事なものなので』と、あえて前と同じことを言いました。もういいとか、義母が決めることじゃないんですよね」
その愛子さんの言葉を聞いて、義母が「あの子にちょうどいいのに…」と不機嫌そうに返すのを聞いて、愛子さんは「もうダメだ」と思ったそうです。
そして、「長男の嫁なら我慢するものよ」と嫌味のように言ってくる義母の様子に、お付き合いをやめようと決意。
この日以降、愛子さんは義実家に行く回数を減らし、義母と話すこともなくなりました。
非常識な義実家とは距離を取る
「夫は、さすがにありえないと怒っていました。どこまでもこっちをしたに見るというか、自分の都合のいいときに長男の嫁を持ち出すとか、昔の自分を思い出したそうです。夫からは『もう実家には行かなくていい』とそのときに言われました」
「あの子にちょうどいい」などはどうでもよく、あげたいなら義母が自分で買えばいいこと。どうして愛子さん家族から奪うのか、「非常識すぎてもう関わりたくない」というのが愛子さんと夫の本音です。
義母について義弟夫婦がどう思っているのかはわからないけれど、そちらとのお付き合いも、自動的に減っていったと言います。
夫はこの一件を弟に話したそうで、そのときに「こっちも心苦しかった」と明かされたそうです。
「考えたら、兄の子どもから奪ったものを渡されても、うれしくないですよね。私もお嫁さんからいつも『すみません』と言われていましたが、あの人たちも被害者なのだと、いまは思っています」
自分の子どもを可愛がってくれるのはたしかにうれしいけれど、問題はそのやり方。義母だけが満足するような愛情のかけ方は、迷惑とも言えます。
きっぱりと距離を置くのは自分たちのためで、母親から離れた兄を見て弟がどうするかを愛子さんは見ているそうです。
「義母の価値観はもう変わらないと思います。だから、こっちが離れるしかないんですよね」
義母であっても、自分たちを支配する権利はありません。
非常識な考え方に「No」を伝えることは、正しく自分たちが自立するためだと、愛子さんは思っています。
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