幕張から渋谷へ。深夜のカフェ巡りデート?
ミズ:渋谷の、それこそスクランブル周辺ってパーキングがないんですよね。仕方なくパーキングが連なっている道玄坂を上って見てみると空いているところがあって、急いで車を入れてユウスケが待つ、宇田川町にある「カフェ ボヘミア」に向かいました。
編S:結構夜遅くまでやっているところですね。
ミズ: 店内のトルコランプがオシャレで、ご飯も美味しいカフェです。ヒーターがあるテラス席があって、シーシャ(水タバコ)も吸えるんです。シーシャがSNS映えするってハマっている子もいましたね。
ミズ:クリスマス…イブの夜からもうクリスマス当日になっていたんですが、渋谷はかなりにぎやかでした。でも、カフェは結構落ち着いていて、話しやすそうだなと。
カフェの一席でビールを飲んでいたユウスケは、少し痩せてみえた。仕事が忙しいのだろうか。なんとなく気恥ずかしくて、無駄に明るい調子で声をかけると、いまでは誰も使わない、ちょっと子どもっぽくて昔懐かしいあだ名、「のんちゃん!」と私を呼んだ。しかし、挨拶もそこそこにユウスケが席を立つ。
「ここはムードが良すぎるから、どこか明るいお店に移動しようか」
えっ、デートなのにムードがないほうがいいの?と戸惑ったが、お互いの顔を見て瞳を見つめて、しっかり話し合いたい事柄なのかもしれない。久しぶりにオシャレなカフェを楽しめると思ったので少し残念だが、仕方がない。
「もう午前2時すぎだし、いまからクリスマスの渋谷で明るいところで、朝までやってるとこってあまりないよ?」
「いや、朝8時ぐらいまでやってるスクランブル交差点近くの『マイアミガーデン』があるじゃん」
マイアミガーデンはスクランブル交差点の目の前、駅近だが地下の店内はとても広く、もうお酒は飲みたくなし、出来るだけ駅近で始発を待ちたいなんてときに重宝する、イタリアン系レストランだ。ファミレスっぽい雰囲気で明るい店内のためか、意外と夜の時間帯でも空いていることが多い。
編S:あそこ、ネカフェとか行きたくないときにいいですよね。客層も幅広くて居心地もいいし。
ミズ:そうなんですよ。そのときもマイアミガーデンで隣の席になった80代ぐらいのおじいさんが「渋谷といえば、あれだよ…金原ひとみだよな。あれはいい作家だ」と同席している40代ぐらいのおばさんに話していて。正直ユウスケの話よりそちらの話に混ざりたくなりました。
編S:作家の先生と編集者、とかですかね?年配の方々から結構コアな話が漏れ聞こえてきたりして、渋谷のカフェは結構好きです。マイアミガーデンに着いてからはどうなったんですか?
ミズ:ユウスケはすごく歯切れが悪くて、それでいて真面目な顔で、急に自分の身の上話を始めました。幼馴染みたいな感覚だったから、自分と出会ったころもそんなに悩んでいたんだ…と胸が締め付けられたりして。復縁したいとかじゃなくて、人生相談か、仕方ないな〜と思って「力になるよ」とか言っちゃったんですよ。
ミズ:そしたら急に「僕は君のことをすごく大切に思っている。だから君の人生と僕の人生を交わらせてくれないか」と言い出したんです。
編S:えっ、それプロポーズじゃないですか!