ずれていくふたり
ライターi:波乱って、何があったの?
ナオ:いろいろありすぎて、何から話していいかからないくらいだよ(笑)。端的にいえば、口論が格段に増えた。結婚するまでほぼ喧嘩することのなかった私たちだけど、彼の起業費用をどうするというところに始まり、毎月の生活費をどうするのか、いつマネタイズの見込みがつくのか、とか毎日のように話し合って、お互い譲れずに喧嘩へ発展することの繰り返しだった。
それに計画は結局、計画にしかすぎなくて、時間はどんどん過ぎていった。減っていく貯金、突然ふたり分の生活費を稼がなきゃいけなくなったプレッシャーで私もヒステリックになってた。
ライターi:お金の問題かぁ。夫婦といえど難しいところよね。
ナオ:そうなの。それにさっき話した29歳までに結婚、30歳のうちに出産っていう自分の人生計画があったから、将来のための貯金はできる限り崩したくなかった。
さらに、妊娠したら体力勝負なフォトグラファーの仕事は早い段階でできなくなってしまう可能性も高いし、復帰後も夫婦とも自営業だと保活が困難なのは目に見えてる。
そうなると今後どうなるんだろうとか、気持ちばっかり焦っちゃって。だからどんどん彼の仕事に対する姿勢やビジョンの甘いところに目がいって許せなくなって…もう悪循環だった。
ライターi:そもそも、ナオには確固たる人生計画があったわけだよね?彼の起業によって、そこは大きく変えざるを得ないことになったけど、それについて彼は何て言ってたの?
ナオ:それが…、交際中に結婚や子どもの願望はしっかり確認してたんだけど、何歳までにこうっていう詳細な人生計画については話してなかったの。彼と出会ったときには自分で定めたリミットに近づいていたし、さすがに出産する年齢まで伝えるのはリアルすぎるかなって気が引けちゃって。
だから喧嘩のときに結婚から先の人生計画について泣きながら話したときも、彼は「そこまですぐだと思わなかった。なんでいまそれをいうのか」って火に油注ぐだけになっちゃった。
ライターi:彼もナオがそんなに強く思ってたって知らなかったんだね。
ナオ:そう。こんなに喧嘩が続いて、私も痛感したよ。あまりにも第1目標だった「結婚」に集中しすぎて、彼とその先の将来のことをまったく共有できていなかったんだって。最終的には彼の何を見て結婚したんだろうと自問自答ばっかりしてた。
ライターi:未婚の私がいうのも変だけど、結婚ってゴールじゃないもんね。
ナオ:本当にそう。結婚したからって安定するわけじゃない。問題は容赦なく降りかかってくる。そして相手ありきな部分もあるから、自分の計画だけでは物事は進まないんだよね。
ライターi:ここまで聞いているだけでもまぁまぁヘビーだけど、まだ離婚は考えていなかったんだよね。
ナオ:離婚が頭をよぎったことはあるけど、そんなときにいつも眼に浮かぶのはお祝いしてくれたり、結婚式に来てくれた友人や両親の笑顔だった。
あんなにたくさんの人に心から祝ってもらったのに、そんなすぐに離婚を考えちゃだめだって。結婚式をしていなかったらもっと早く別れていたかもしれないな。