つながる点と線。見えてきた彼女の本性
核心に変わったのはいくつかの証拠がつながったからでした。
まず、本来であれば昨日みんなに報告する予定でしたが、結局できず、彼とのことを知っていて、しかも疑惑の彼女の話や職業をすべて知っている人はサキしかいないこと。テーマパークのときもそうでした。こんなことが2回も続くとは思えません。
さらにサキも何度も嫌がらせメールを受け取っていましたが、タレントでもインフルエンサーでも何でもない一般人の私たちが、同時にハッキングされることなどそうそうありません。
ほかのメールも来るタイミング、書かれている内容を考えれば、発信できるのはひとりしかいませんでした。
それまで彼女を疑ったことはありませんでしたが、そう思った瞬間、すべての点がつながってしまい、犯人は彼女以外に考えられなくなりました。
疑いが確信に変わった私は、彼に会い、まずは疑惑の彼女の職業とフルネームを確認しました。
理由は少しでも犯人がサキじゃない可能性を持ちたかったから。もし、その疑惑の子の名前や職業がFacebookの申請者と同じものであれば、彼が浮気をしていることになるけど、彼に聞いた苗字や職業はまったく異なるものでした。
こんなことを突然いまさら聞いてきた私をおかしく思った彼に問い詰められ、メールのこと、そしてその犯人がサキだと思っていることを話しました。
私とサキの仲は彼も知っていたので、親友をそんな風に疑うことを軽蔑されるかもしれないと考えましたが、ひとりで抱えきれなくなっていた私は、全部彼に話してしまったのです。
本当の彼女
彼から沈黙のあとに出た言葉は予想外のものでした。
「アリサにはいわないでおこうと思っていたけど、彼女、結構評判悪いよ」
サキが告白されたといっていた男性たちは、実はサキからいい寄り、相手が交際を断ったりトラブルになったりすると、行動ひとつひとつを問い詰める長文のメッセージが届いていたこと、しかもそのメッセージはLINEだけでなく、EメールやFacebook、Instagramなど、さまざまなSNSで代わる代わる送られてくる執拗なものだったこと。
その件について男性側から相談を受けたことが何度かあった彼は、サキと距離を保ちながら付き合っていたということを、このとき初めて知りました。
「これまで大きな話にならなかったのは、みんな大人だからまわりにいわなかったからだろうね。アリサはどう思っているんだろうって思ってたけど、ふたりは親友だし、悪くはいいたくなかったからこの話はしなかったんだ。あと、いつもアリサをバカにしたように話すサキをみて、何でアリサは笑っているんだろうと思ってた」
前の私であれば、彼のこの言葉を受け入れられなかったかもしれません。そんな話は嘘だと彼を強く否定し、怒ったと思います。でもそのときの私は、すんなりと納得できました。そして、彼女の言動のおかしな点ばかりが次々と浮かんできました。
それまでは「すごいな」としか思っていなかった彼女の投稿。「photo by 〇〇」と誰かが撮った彼女の写真はいつも写真が一定のアップで、必ず片手が写っていないこと。彼女を褒め称えるメッセージはリポストではなく、スクショでアカウントを消して、わざわざ誰のメッセージかがわからないようにしてアップされていること。そして異性まわりの話…。
ほかにも、私の彼と交えてご飯を行きたがるサキに対し、歴代の彼が「サキちゃんはちょっと…」と断っていたことも思い出し、ずっと私とサキは真反対の性格だから苦手なんだろうくらいにしか思っていませんでたが、これも彼らはサキに何かしらの異常を感じていたからかもしれません。
もしかしたら虚言だったのかもしれないと、彼女のイメージを固めていたハリボテがひとつひとつ崩れていくような気持ちでした。
どうして気づかなかったんだろう…と悲しく、腹だたしい気持ちになりながらも、私にはどうしてそんなことをするのか理由がつかめませんでした。
嫌いな人では到底できないほど、連絡を取り合っていたのに…。一緒にいた毎日を考えれば考えるほど混乱してしまいました。