「あなたはこれまでドメスティックバイオレンス(以下、DV)を受けたことがありますか?」
「えっ?わたしが?いやいやそんなのないですよ!」
そう胸を張っていえる、サバサバしていて世間的にはいわゆる「強め系女子」とラベリングされるだろう、筆者。そんな私が、まさかオーストラリアでDV訴訟をすることになるとは…。
COVID-19によるパンデミック以来、WHO世界保健機関はDV予防・救済策の強化を各国へ発信しました。国によってDVの対応策はそれぞれですが、ここでは筆者が実際に肌で感じた見習うべきオーストラリアのDV対応策について、体験談を交えて紹介していきます。
DV裁判は突然に
「私、オーストラリアに住み始めて3カ月目にDVの裁判したんだよね」
この話を始めると友人は「え!?何があったの?!どんな暴力受けたの?!裁判って大ごとじゃん!」と目を大きく開いて異口同音のセリフを発します。
それもそうでしょう。「DVで裁判」なんて、日本では傷害致死に関わる事件でないとなかなかニュースにならない話題です。でも私自身が受けたDVは「ケンカの延長戦なんだけどなぁ〜」という印象で、裁判沙汰になってしまった当時は「なんて面倒なことが起こったんだ…。海外怖い、帰りたい」くらいにしか思っていませんでした。
このまま殺される…DV被害の発端
DV裁判となったのは、当時お付き合いをしていたスペイン人、ジェームズ(仮名)とのケンカが発端でした。
あることがきっかけで夜の路上で痴話ゲンカをしてしまい、Uberタクシーを呼んでジェームズを家路に向かわせようとした際、話を終わらせたくないジェームズがサッと私からスマホを取り上げた瞬間、放物線を描いて目の前にある川にスローイン。
スローモーション再生を見ているかのように川に消えていくスマホを見届けながら、唖然としました。
「うわ、大事な携帯電話が!っていうか、この後どうなるの!?私もこのまま川に投げ捨てられるの!?殺される!?この人めっちゃ怖い!」
暴力的な一面をこれまで一切見せてこなかった彼の変容ぶり、そして人通りの少ない街路という環境。濁流のように覆ってくる恐怖を抱いた私は、一目散に家まで全速力で避難しました。
「何であんな男と付き合ったんだろう。もう完全に別れよう。あぁ、海外に来てまで本当に嫌な気分!もう男関係はコリゴリだわ!…そんなことよりスマホはどうにかならないものか」
避難したあとの私はなぜか冷静で、別れのつらさやついさっき味わった恐怖感よりもネクストアクションに考えを集中させていました。
その結果、「このスマホの被害、保険対象にならないかな」と考えた私は、保険会社へ提出するための被害届を申請するため警察へ向かいました。