初裁判で学んだオーストラリアのDV対策
日本でも裁判など行ったことがない私。出廷当日は喉から心臓が出るような思いでした。ことなく終わらせたい。逆恨みもされたくないから、とりあえず穏便に終わりますように…。
裁判所は被害者と被告人が接触しない設計となっており、待合室はDV関連の女性被害者であふれていました。「こんなにも被害者がいるのか」と思った反面、私のような事例の人もいるのだろうなと考え始めたあたりから「もしかしてこれがDV対策のあるべき姿なのかも…」と、少しづつ私のなかのDVに対する意識にも変化を感じ始めていました。
尋問が始まると、開口一番でこう答えました。
「DV被害を出したわけではなくて、痴話ゲンカの延長でこんなことになってしまったのです。彼とは2度と会いたくはないけど、状況を複雑にして逆恨みされたくないし、とにかく穏便に終わらせてほしいんです。そういえば事件以降、私の身の回りのパトロールが厳しくなったのですが、これは何か対策いただいているのでしょうか?」
「あなたの意見はわかりました。その旨を裁判官に伝えますね。どうやらもう連絡は絶っているようですしね。あ、あとパトロールに関してはDVにまつわる報告があった際には強化するようにしているのです。
特に、事件の翌日と裁判通達日、あとは裁判日に。過去の統計でこれらの日に加害者が被害者宅に押しかける傾向があってね。だからきょうもあなたの家の近くを警察がパトロールするから心配しないでね。あ、そうそう。あなたは彼に接近禁止令出したい?彼があなたの半径1km以内に近寄れない旨の発令なんだけど…」
「いや、大丈夫です。そんなおおそれたことは…。いまでも十分なサポートをいただいて、とても感謝しています。本当にDVに関してはお力を入れているのですね」
「ほかの国のことはよく知らないのですが、オーストラリアはDVに対して厳しい罰則が制定されています。移民国家という背景もあるけれど、しっかりと制度を固めておかないとDVのような隠れやすい犯罪は闇に葬られてしまいがちなので、政府も対策には力を入れています。
この国では、過去にDV犯罪歴がある人は入国できない規則になっているのよ。実際に有名な話だとアメリカ出身の歌手であるクリス・ブラウンは税関で強制送還になっているわ。カルチャーショックもあるかもしれないけど、この国にいる以上、あなたも制度には従ってね」