その心境は、おかしくない
少し想像してください。まだお母さんに甘えていたいという気持ちでいっぱいのときに、お母さんが何らかの理由で傍に居なかったとしたら、お母さんに甘えたいと感じれば感じるほど心は苦しくなります。
その苦しさに耐えられないと感じたとき、私たちの心はその想いや感情をなかったことにしようとします。このことをカウンセリングでは心や感情の「抑圧」とよびます。
「抑圧」する方法として、その面を攻撃したりまた嫌ったりします。子どものころに子どもで居ることが許されない環境だった、子どもではいられなかった。
だから、自分のなかの子どもという面をなかったように扱っている。もしそんな心境を持っていたとしたら、自分の子どもや周りにいる子どもをどう扱っていいかわからない。そんな心境になってもおかしくはないです。
「子どもが嫌い」とは、子どもに対する愛情が薄い「冷たい大人」なのではなくて、自分のなかにあってもいいはずの「子どもの面」を受けいれられないでいる。そんな心の状態になっている可能性があるのです。
それがいけないことなのではなく、自分が子どもの面を抑圧しないと生きてこれなかったことを、まずは自分が自分を優しく知ってあげることが、大切なのではないでしょうか。
誰もが持っている「抑圧」の心理
子どもの面を抑圧するのは、特別な環境に育ったからだけでもありません。
「私はすごく甘えさせてもらえたけれど、あまり自由は与えられなかったわ」とか、「私はとっても自由にさせてもらっていたけれど、子どものころから感情的になることをすごく怒られた」など、こんな子どもの面は受け入れられたけれど、違う子どもの面は表現できなかったという経験は誰もがしていることでしょう。
そして私たちは自分の子ども時代に経験してきた、依存する気持ちや甘えるといった気持ちを、捨てたり、嫌ったりして大人になってきました。
それは「自立」するという成長の過程ではみんなに必要だったことです。ただ心が成熟していくために、より豊かな人生を築くために、もう1度子どもの面を受け入れないといけないときがやってきます。
誰もが自分の子どもの面を嫌ったり、抑圧している心理を持っているのです。そして自分の心に向き合って、自分が嫌ったり抑圧して来た一面を受け入れることは、いままで自分を縛っていた束縛から解放されたり、いままでほしいのに手に入らなかった豊かさや幸せを手にできたり、人生にとってとても意味のある取り組みです。