人に指摘されて、ひどく感情的になったり、モヤモヤをずっと引きずってしまう「何か」はありますか?
これらは「コンプレックス」とよばれ、ほとんどの人が持っているもの。コンプレックスは、上手に向き合わなければ、人間関係に亀裂が入ることもあります。そこできょうは、コンプレックスとの向き合い方についてお話したいと思います。
まずは、「コンプレックス」と「劣等感」の違いからご紹介しましょう。心理学者であるC.Gユングの提唱した「コンプレックス」、アルフレッド・アドラーのいう「劣等感」についてです。
ユング提唱「コンプレックス」の理論
人は誰しも、自分自身でも不思議なほど強い感情的な反応をしたり、妙にこだわったりしてしまう特定のことがらを持っています。たとえば、特定の話題になると妙に頑固になったり、興奮したり、その場では表面に出さなくても、次の日までも不快感が残っていたりするということがあります。
学歴や容姿、金銭、性の話や地位や収入などに関する話題に対して、そのような反応をする人が多いですね。
しかもこの感情的な反応は、単なる道徳観や倫理観からくる批判とは違って、基本的には、「とにかく気に食わない」とか「自分の方が正しいし優れているはず」というような感情が中心なのです。
このような反応を引き起こす心のはたらきを、ユングは「コンプレックス」と名付けました。定義としては、「感情に色付けされた心的複合体」というものです。
日本語でコンプレックスというと、「劣等感」を指す場合が多いのですが、ユングの定義からすれば、この「劣等感」とコンプレックスはイコールではありません。
たとえば、容姿に関する劣等感が単なる「劣等意識」ではなく、「劣等コンプレックス」だった場合、特殊なメイクや奇抜な服装でごまかそうとしたり、異性を次々とハントすることで、その劣等意識を打ち消そうとしたりするという行動に現れることもあります。
あるいはそのような容姿の源となった親を憎んだり、容姿のすぐれた人をひそかに強くねたんだりすることにもなります。
反対に、単なる「劣等感」の場合は「自分は○○に関して劣っている」という単純な認識や感情であるので、複雑な感情に色づけされた反応は生じません。「自分は容姿に自信がないから」と、体型のあらわになる服装や、容姿のよし悪しが問われる場面を素直に避けることになるでしょう。