複雑な感情反応が生じるのが「コンプレックス」
次は「コンプレックス」について、もう少し詳しくお話していきますね。コンプレックスとは単なる「自分は劣っている」という感覚ではなくて、それが感情的で複雑な反応(その複雑さゆえに「心的複合体」とされた)を引き起こすものです。
そのような複雑な反応を示すとき、初めて「劣等感コンプレックス」とよばれ、ユングのいう種々のコンプレックスのうちのひとつとされることになります。
コンプレックスがやっかいなのは、しばし当の本人がそのコンプレックスを持っていること自体、認めたがらない場合が多いからです。そのため、人から見ると明らかにごく普通の反応をしているつもりだったりします。
また、人からコンプレックスを持っていることを指摘されたりすると、ますますかたくなになったり、怒ったりする場合も多いのです。
そして、ふだんは理性的で冷静な人でも、そのコンプレックスにまつわることに関してだけは、冷静さを欠いたり理屈が通らなかったりします。まわりの人からは、「あの人の前では、○○については話題にしてはいけない」と噂されていたりするということにもなりかねません。
また、あなたのなかでは、「そんなこと大したことではない」と思っていても、相手からすれば、それは触れられたくない痛い部分でもあったりします。ですので、自分の感覚だけで相手を理解するというのは、とても難しいんですね。
相手が気にしているにもかかわらず、「そんなことは気にするな!」「なんでそんなことを気にするの?」といってしまうと、相手からすれば「わかってくれない人」「心を開くことはできない人」となってしまい、人間関係に亀裂が入ることもあります。
コンプレックスを自覚し、受け入れる
このように、やっかいな問題の原因となるコンプレックスですが、コンプレックスを自覚し、あまり複雑な感情的でない反応ができるようになることが大切です。
そして、自分のなかの反応しやすい部分を「敏感な部分」として受け止めたり、自分の現実を自分の個性として受け入れることができると、それはコンプレックスではなくなるわけです。
そのためには何よりも自分自身で、自分の感情的な反応やこだわりを見つめ、それと対話しなければなりません。しかし、それはとても厳しい対話といえるでしょう。自分自身の目を背けたい部分や、見たくない部分と向き合うわけですから。それでも、対話する。そうすればいまよりももっと好きな自分になれるはずです。
- 参考:『ユング心理学』/著:福島哲夫(ナツメ社)、『勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』/著:中野明(学研プラス)
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