「順風満帆じゃない人生でも、幸せに」という親の願い
A:自分の名前を好きになるきっかけは何かあったの?
Y:正直、自分の名前についてグダグダ考えている暇がなくなったってのもあるんだけど(笑)、高校生のころに名前の由来になった漫画を父の書斎で見つけて、読んだことも大きいかな。ストーリーを通じて、「親がこんな子になってほしい」って願ってつけてくれたんだな。「幸せを願ってくれたんだな」っていうのをすごく感じた。
実際、私の名前の由来になった主人公は若くして死んでしまうから、「よくつけたな」とも思ったけど(笑)。でも、生を自分らしく全うするというか、何かしらの困難を抱えても、たくさんの人たちに囲まれて、愛し愛される暮らしをしてほしいっていうメッセージだとも捉えられたかな。
親がそこまで考えていたかどうかはわからないけど。これは『鬼滅の刃』に由来する“鬼滅ネーム”に通じるところもあるかもしれないね。
A:確かに、作中で死んでしまう「みつり」ちゃん(恋柱・甘露寺蜜璃)や「玄弥」に通じる部分もあるかもね。
Y:そうそう。親になるころには、人生ずっと順風満帆でいくわけじゃないこととか、今回の新型コロナのように外的要因で苦境に立たされることもあることもわかっているじゃない?
親が言語化しているかどうかは別として、それでも強く幸せに生きてほしい、そんな願いが“鬼滅ネーム”には込められているんじゃないかな。
A:最後に、「“鬼滅ネーム”をつけられた子はかわいそう」だと思う?
Y:それはまったく思わないよ。生きていくなかでからかってくる人もいるかもしれないけれど、それはどんな名前だって一緒。つけられたその子やつけた親の問題ではなく、多くはからかう側の問題なんじゃないかな。
それに『鬼滅の刃』に出てくる登場人物はみんな魅力的だから、どのキャラクターの名前をつけてもらったとしても、きっと自分の名前を好きになるんじゃないかなって思うよ。
Yは取材中、「私の場合はそこまでメジャーな漫画ではないから、『鬼滅の刃』のように多くの人が知っている漫画由来の名前だとまた違うかもしれないけど…」と何度もいっていましたが、Yが大人になったいまも大切にしている漫画と同様、“鬼滅ネーム”の子たちにとって『鬼滅の刃』はずっと手元に置いておきたい作品になるんだろうなと思いました。
またYの話を聞いて、“漫画ネーム”を持つ人は、自分の名前の由来になった作品を読み解きながら、「自分とは何か?」「どう生きたいのか?」ということを考える時間も生まれるのだろうなと、少し羨ましく感じました。
「名前は親からの最初のプレゼント」とはよくいわれますが、“漫画ネーム”の子たちにとっては、名前に加えて、その作品も「プレゼント」になるのかもしれません。
どんな名前も親が一生懸命悩み、思いを込めてつけたことには変わりがありません。漫画由来の名前はかわいそう、キラキラネームはかわいそう、しわしわネームはかわいそうetc…、第三者がそんな風に思うのは、余計なお世話以上にナンセンス。
そんな陰口を叩く前に、「彼や彼女の名前にはどんな思いが込められているのかな?」と想像してみるほうが、よっぽど自分自身が豊かに生きられるのではないでしょうか。
それでは2020年(令和2年)に生まれた子どもたちが親からもらった名前に、何か特徴はあったのでしょうか?2020年生まれの赤ちゃんの名前ランキングをご紹介しましょう!