露木行政書士事務所・露木幸彦です。夫婦の悩み相談を行なって、今年で15年目。最近、感じるのはいままでになかった相談が増えているということです。
今回は、最近の傾向として多く見られる「離婚せず死別待機」について取り上げましょう。
突然告げられた「熟年離婚」
近年、「終活」の二文字を耳にする機会が増えましたが、場合によっては「妻の存在」すら身辺整理の対象になり得るようです。実際のところ、「突然、離婚だと言われ困っています」と相談しにくる女性は一定数存在します。宮迫洋子さん(仮名・59歳)もその1人です。
夫と一緒にいれば老後も安泰だと思っていた洋子さんにとって青天の霹靂でした。「いまの生活を保証するからいいだろ?」と夫(71歳・自営業で年収1,200万円)が離婚を迫ってきたのですが、決して老い先は長くないのに、なぜ夫は離婚を切り出したのでしょうか?
「俺が目を光らせているうちはいいけれど、家内が実家を売り払って母を追い出したり、退職金で遊び回ったりするのは許せない!」それが夫の本音ではないかと、洋子さんはいいます。
夫は代々守ってきた財産(実家の土地建物、墓や駐車場など5,000万円相当)を父から相続したのですが、まだ母(93歳)は健在。万が一の場合、夫婦で築いた財産だけでなく夫の家の財産まで洋子さんと息子(30歳)で折半することになるのですが…。
どんな遺言を残しても妻には遺留分があるので、一切相続させないことは不可能。一方、離婚すれば元妻の相続分はゼロです。
夫の提示してきた条件を精査すると、洋子さんが80歳まで健在だとして生活費(月15万円×80歳まで)、住宅ローン(夫が返済)、年金分割(月3万円×80歳まで)なので洋子さんが得る金額は計4,300万円。
洋子さんいわく夫は過去に脳梗塞で倒れたことがあり、担当医からは「次はない」といわれているそう。そこで息子が洋子さんに弁護士を紹介し「旦那さんの条件で離婚する場合と、離婚せずに死別した場合と比べてみては」と入れ知恵をしたようで、もし夫が3年後に亡くなったと仮定した比較を行ないました。