露木行政書士事務所・露木幸彦です。筆者は夫婦の悩み相談を専門としております。
2020年の2月下旬、日本でも猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。
ウイルス封じ込めにより発生した格差…具体的には既往症の有無による生存格差、自粛対象の有無による業種間の経済格差、マスク調達の有無で生じる感染リスク格差によって壊れていく家族からの相談が絶えません。
実際のところ、危機的な状況に陥ると、化けの皮がはがれ、本性が丸出しになるものです。
たとえば、物資の買占め、自粛の無視、感染予防の非協力などによって、配偶者の「本当の姿」が明らかになったとき。別れを決断する「コロナ離婚」の相談者もいました。
緊急事態宣言が解除された2020年5月下旬でも相談者は後を絶ちませんでしたが、今回ご紹介する陽子さん(仮名・56歳)もその1人です。
モラハラに耐える日々、そしてコロナ禍へ…
夫の和夫さん(仮名・58歳)は外資系企業に勤務しており、帰宅が夜中になることもある過酷な職業。
結婚当初、陽子さんはあたたかい食事と風呂を用意するため、どんなに遅くとも起きていたのですが、和夫さんの反応は感謝ではなく激怒。
「余計なお世話だ。お前が待っていると思うと仕事に集中できないじゃないか!」と吐き捨てたのです。
和夫さんが家庭を見向きもしないので、洋子さんは家事や育児を一手に背負っていました。ところが、そんな陽子さんに向かって「俺は頼んだ覚えはない。家のことはお前が勝手にやってるんだろ!」と逆上。
さらに「お前の気が強すぎるから、いままで何もできなかったんだ!」と攻撃する有様。
陽子さんはそんな和夫さんのモラルハラスメントを長年我慢し続けていたところ、コロナ禍に突入したのです。
「何様のつもりだよ!」妻が呆れた夫の言動
「最近、感染経路がわからない人が増えているみたい。だから外から帰ってきたら、ちゃんとしてね」
都道府県は、感染者の情報を公表しています。2020年の4月中旬、陽子さんはスマートフォンを開くたびに最新の情報を確認していました。
感染経路が不明ということは、誰がいつどこで感染してもおかしくない状況です。そのため、陽子さんは帰宅すると手を洗い、うがいをし、衣服をはたくだけでなく、在宅中もマスクを着用していました。
「夫にうつしてはいけない」と気を使っていたのですが、陽子さんは和夫さんも同じこと…陽子さんにうつしてはいけないと思っていると信じていました。だから、和夫さんにも同じことをしてほしいと頼んだのです。
「俺のことを馬鹿にしているだろ?何様のつもりだよ、上から目線で気に入らない!」
今回の夫婦は、結婚30年目。長年連れ添った夫と妻は、空気のような存在です。
気持ちを伝えるのは恥ずかしくて素直になれないのは筆者もわかりますが、新型コロナウイルスという人生最大級の危機…しかも人生が終わるかもしれない命の危機に遭遇してなお、和夫さんは強がり、意地を張り、強情に振る舞ったので、陽子さんは呆れて物も言えなかったそう。
それでも筆者は、「旦那さんは自粛ばかりで苛立っているのでしょう。新型コロナウイルスが落ち着くまでの我慢です」と陽子さんを慰めたのですが…。