「離婚」より「死別」を選ぶ理由
まず生活費ですが、婚姻費用(生活費)算定表に夫婦の年収を当てはめると、夫の提示額(月15万円)ではなく月17万円(×3年間)が妥当な金額です。
次に自宅ですが、夫が亡くなった場合、団体信用生命保険が適用され、保険金と住宅ローンが相殺されます。年金ですが、夫が亡くなってから洋子さんの年金を受給するまでの間(62歳~65歳)遺族年金を受給することができ、夫の年収から計算すると遺族年金は毎月13万円(×3年間=468万円)です。
そして洋子さんが65歳で自分の年金を受給し始めると、その分だけ遺族年金から差し引き、遺族年金(月7万円)+国民年金(月6万円)となります。財産(5,000万円)、夫個人の貯金(800万円)、自宅(2,800万円が相場)は妻と息子が折半で相続します。
最後に退職金(小規模企業共済。2,500万円)の第一受取人は「戸籍上の妻」なので洋子さんが2,500万円をすべて受け取ります。死別の場合、洋子さんが受け取る金額は8,500万円に達します。
このように離婚より死別のほうが4,200万円も有利なのです。「主人に早く死んでほしいというわけじゃないんです。でも、なかなか気持ちの整理がつかなくて…」と洋子さんはいいますが、不利な条件で無理に離婚する必要はないでしょう。35年も連れ添った相手と離婚するか否かの決断をするのは簡単ではなく、とりあえず様子見を続けることにしたそうです。
熟年離婚(同居35年以上)は40年で20倍に膨れ上がっていますが(昭和50年:300組、平成27年:6,266組 ※厚生労働省調べ)、これは氷山の一角です。なぜなら男性の平均余命は女性より短いので(男性は80歳、女性は87歳)、洋子さんのように離婚より死別のほうが金銭的に有利なら、離婚に応じずに夫が先立つまで待つケースはここに含まれないからなのです。
- image by:Unsplash
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。