「私の返事はね、」
次の日、ヨシキも和也もいつも通り私に接してきた。ヨシキはお返しを無事渡せたって安心していて、私と和也に何度もお礼をいってくれた。一方和也は、私がいいかけた返事を聞こうとはしなかった。
またいつものように、私と和也は普通のクラスメイトに戻ったのだ。
そのうちクラス替えになり、私と和也の間には距離が生まれる。文系に進んだ私と理系に進んだ彼。接点がほとんどなくなり、そのまま卒業までほとんど話すことはなくなった。
「なあ、お前あのあと和也に会ったの?ちゃんと返事した?」
卒業後、ヨシキは私にこう話した。
「あの日、俺別に兄ちゃんから連絡なんてなくってさ。和也がホワイトデーのプレゼント買ってんのに気づいたから、渡すついでに告白しろ!と思ってわざとふたりきりにしたんだよね」
「えっ、そうだったの?」
「俺とお前って家近いから、俺がいたら絶対和也は告白できないじゃん?なのに次の日会ったらふたりとも普通だしさ」
どうやらあのシチュエーションはヨシキのとっさの機転で作り出されたものらしい。
「で、和也は何かいってたの?」
「それがなーんもいわねえんだよ。どうだった?って聞いたら、何のこと?とかいわれるからさ。てっきり振られて悲しんでるのかと思った」
「正式な告白されたわけではないし、私もはっきり返事してないからね…」
「あ〜あ、俺がせっかく気利かせたのにさぁ」
ヨシキは不満そうな声を上げる。私だってモヤモヤしてる。あのとき無理やりにでも返事をしていたら、和也と結ばれていたのかな、と。いまでも捨てられない、彼に貰ったネックレス。これは淡いホワイトデーの思い出として、まだしばらくそばに置いておこう。
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