コロナ禍もあり、新規での出会いのスタンダートとなりつつある「婚活アプリ」。合コンや友人からの紹介と違い、会う前に年収や住んでいる場所など、ある程度のスペックがわかり、メッセージのやりとりをしてから会うかどうかを決められるため、闇雲に探すよりは打率がよく、便利なのは確か。
だが実態は、身分証の確認が必須の場合が多いとはいえ、トンデモ男や女に出会って、太ももあげて逃げてきた…なんてことも。そこで今回は独身歴30ウン年の婚活女子である筆者が出会った、一風変わった婚活相手についてご紹介しよう。
- せしりあ:ライター。婚活当時30代前半、ひとり暮らし。元V系バンギャ。好きなバンドの全国ツアーを追っかけるのが生きがいだったが、そろそろ婚活をと重い腰を上げる。
- 使ったアプリ:某大手恋活婚活アプリ
- 求める男性像:30~40代、ひとり暮らし、あるいはひとり暮らし経験あり、年収1千万以上、非喫煙者、動物好きの人
- ※婚活をしていたのは、コロナ前のため、ソーシャルディスタンスの概念はなかったときのエピソードです。
ひとり暮らし経験を必須としたのは、以前付き合っていた元彼がマザコンで、30過ぎて実家暮らし。ただ実家暮らしなだけならいいが、洗濯はおろか米すら自分で炊いたことがなく、母とカフェでケーキを半分こして食べる甘えん坊さん★だったため、自立している人がよかったから。
そして年収に対しては特にこだわりはなかったのに、まわりの婚活女子たちがそろって1千万以上をゲットすることを目的としていたため、流されて高望み登録を…。写真で顔を選んだり年齢で切ることはせず、ただ職業と年収のみでいいね&いいね返しをしていった。
あとでわかることだが、求める人材を具体的にしてから求人活動をしないと、優秀な人材が集まらないのは、仕事でも婚活でも同じである。この時点で筆者の失敗は見えていたのだ。
登録した婚活アプリは周囲でも使っている女子が多く、それで結婚まで至るケースもあったため、ある程度望みに近い人に出会えるつもりで始めた。さて、そこで出会った男性たちとは?なお、ここで紹介する男性の年齢や場所は、個人情報がわからない程度にフィクションを織り交ぜています。
Case1.税理士(法人専門)・41歳
会った場所:広尾
メッセージのやりとりをしていて、とにかくこちらの話を聞いてくれ、適度に褒めてくれるなど紳士的な対応に好感を持ち、会うことにした税理士の男性。広尾駅そばのワインのおいしいお店での顔合わせとなった。
店に入ると彼はすでに到着していた。
「お待たせしてすみません」「全然待っていませんよ、むしろ広尾まで来ていただいてしまいすみません」
そつのない挨拶、さすが税理士(?)。聞けば彼はこの近くのタワマンに住んでいるのだそう。私の好き嫌いを聞きながら、おすすめの料理をさくさくと頼んでくれて、面倒もない(私はふだん食事のメニューは直観で即決するタイプなので、うだうだいつまでも何を頼むか悩む人が苦手である)。
税理士の人と普段話す機会のない私には、彼の仕事の話は新鮮で楽しかった。ちょっと「俺、仕事できるんだ」自慢が過剰だけど、まあ男性ってそういう人多いよね。顔も、少々薄毛が進行しつつあるのが見て取れる以外は、まあ悪くはない(よくもないが)。
これは当たりを引いたかも?と思いながらワイン2杯目に入るころ、風向きがおかしくなった。
「せしりあさんは、北海道出身ですよね?ご両親は北海道に?」運ばれてきたエビのパスタを取り分けてくれながら聞いてきた彼。
「ええ、北海道です」「うちの両親は東京でね、妹も東京在住で、すでに結婚してるんです。家族仲はいいんですよ。でも俺が長男なので、やっぱりね、結婚したら両親とは同居したいんだよね」
ひくっ。ああああああ、アプリのプロフィールには、地方出身と書いてあったのに、いつのまに東京に引っ越してきていたんだ、薄毛の両親よ…(すでに悪態をつき始める)。つくり笑顔が引きつりつつある私に、彼は謎のひと言を放った。
「そういうの嫌がる女性が多いのは知ってるけどさ、俺、年収がいま4千万あるの」
?????
「だから君には家庭を守ってほしいと思うし、見たとこ妹とも仲良くしてくれそうだから、うちの人間になってほしいんだよね。税理士でも法人専門だから稼ぎがいいんだよ」
あーそういうことですか…いい暮らしはさせてやるから、自分に都合のいい条件を飲めと…。
「すごいですねえ!それで(何がそれでなのか)、大変申し訳ないんですけど、私、明日早いのでそろそろ…」。
顔色が変わる税理士。「えーまだいいでしょ、僕の住んでいるタワマンの最上階には、住人しか入れないバーがあって夜景がきれいだよ!おいしいお酒も飲めるからこれから行こう!」
鼻息荒く立ち上がろうとする税理士。それよりも早く立ち上がる私。
「すみません、帰ります(にっこり)」
婚活していて感じるのは、40代以上の男性はいまだに「親と同居」派が一定数いる。それが平気な女性ならもちろん問題ないのだが、私は前述のとおり、ケーキを半分こして食べる母と30代男子の図を受け入れられなかったので、難しいだろう。