Case3.起業家・38歳
会った場所:銀座
年収1千万切り設定をしていると、やたらと出会う「起業家」。アプリにいる起業家のなかでは比較的若めで、ただし写真のお顔はイマイチであった(なんというか、じゃがいも、って感じ)彼は、銀座の素敵レストランで会ってもやはりイマイチであった。やたらとテンションが高く、カタカナ用語を多用する。まあいわゆる起業家(偏見)。
時はもうすぐハロウィンという時期だった。
「せしりあさんは仮装とかするんですか?」額をテカらせながら赤ワインとステーキを交互に口に入れる起業家。
「しますよー。去年はセーラームーンをやりました」
目が輝く起業家、「それ、僕の家でやりませんか!」。
んん?出会ってすぐにその距離感は適切なのだろうか。
「僕の家は勝どきのタワマンで、ここから近いんです。実はね、ちょっと自慢なんだけど、自宅に露天風呂があるんですよ」
「それはすごいですね…」
「写真みます?自分でDIYしたの!」
スマホを差し出す起業家。写真に写っているのは、どうみても子ども用のプールにお湯を張った、ザ・お父さんが作った夏休みのプールだ。露天風呂とな?
「自分でお湯をひいてきて、夜景をみながら入るんですよ~」
キラキラした目で語る起業家。しかし、どうみても、写真にはせまいベランダに簡易的なホースでつないだ温水プール(子ども用)しか写っていない。
「ほら、ここ、階段も自分で作ったの」
確かに、小さい階段がついている。けど、階段、いる?足をさくっと上げれば入れる高さだ。
「いまから一緒に入りませんか!?」
大声を出す起業家。ええと…これに?大人ふたりが?ベランダ、お向かいのマンションから見えそうだけど…。
「ごめんなさい、素敵だけど、明日早いのでまた今度に…」
帰りの電車で即、彼をブロックした。悪い人ではなかった。ただ、新幹線並のスピードで距離を縮めようとしてしまっただけだ。いまごろ幸せに暮らしてくれているといいと思う。