Case4.某局のラジオ番組構成作家・43歳
会った場所:渋谷
職業柄、ちょっと気が合いそうと思って会ってみた構成作家。本当か嘘かは確かめようがないが、知名度の高い番組を作っていた。俺、業界人!という雰囲気を漂わせており、髪の毛はオールバック(登場時はつば広のハット着用)。渋谷は松濤の、こじゃれたバーで飲むことに。
「せしりあさんも文章を書くんですね」
「そうですね。脚本も書いてみたいなって思ってるので、構成作家さん、スゴイです~」
「そうかなあ」
やたらと距離が近い。バーとはいえ、近い。肩がくっついてきて、息がかかるのが正直、気持ち悪い。
会話はまあ、面白くなくはなく、ただあまりにべったりくっついてくるのが不快だったので、1.5時間ほどで切り上げることにした。
「まだいいでしょ」「いやいや明日が」を数回繰り返し、店を出た。
「家どこ?」「あ、自由が丘です」「俺、武蔵小杉だよ!じゃあタクシーで送ってくから、一緒に帰ろう!」
嫌な展開になる気がする。構成作家は店を出るとき、私のバッグをがっつり持ってくれており、今もべったりくっついてくる。正直きもい!
「大丈夫です、まだ電車ありますから。バッグ返してください」
渋谷の路上でバッグの奪い合いをする30代と40代。正直アホらしい図なので、とっとと帰りたい!なんとかバッグを奪い返して、近くにあった地下鉄の階段を駆け下りた。
「なら俺も電車で帰る~げへへへ(げへへは私の空耳)」。
酒くさい!駆け下りる私、追ってくる構成作家、もとい酔っ払いおじさん。
電車に飛び乗ったけど、混んで座れてもいないのにべたべたさわりながら意味不明な会話を繰り返し、しまいには腕をがっつりつかんできてキスしようとしてきた。顔をそむける私。目の前の座席に座る若い男の子が心配そうに見ている。
近づいてくる我が駅、自由が丘。やばい…このままだと家までついてくるぞ!とっさに女友達にLINEした。
「いますぐ私に電話してくれないか!」と。
自由が丘駅に着く直前、LINEはパッと既読になり、すぐさま電話が鳴った。
「電話きたので、これで!もしもし!」
構成作家を振り飛ばし、電車を降りた。振り返ると、すんでのところで締まるドア。運ばれていく構成作家…。
助かった~~~~~~!!!女友達に理由を話しながら家路についた。寂しい独り暮らしと思っていたわが家が天国にみえる。気持ち悪いおじさんと寝るくらいなら、独りのほうがいい。
泥酔構成作家からその夜、連絡はなく、ほっと眠りについた。その翌日、婚活アプリにメッセージがきていた。
「昨日は電車で寝ちゃって、気づいたら和光市だった(顔文字←おじさんが多用する絵文字・下参照)。財布がなくなってて、落としたみたい!(顔文字)」
どうやら武蔵小杉を通り過ぎ、元町中華街まで行き、Uターンした東横線は副都心線となり、和光市まで運ばれたらしい。ご愁傷様です。