「裏切った父親=理想の男性」だった
さて、すでにお気づきの方もいると思いますが、「男性が去っていく」という形で終わりを迎えるパターンは、Aさんの両親のパターンと一緒です。
Aさんのお父さんは浮気していたとはいえ、Aさんにとっては優しくて楽しいお父さんだったのですが、これも「信じていた相手に裏切られ、最後には去っていく」というパターンです。
のちにAさん自身、こうした無自覚のパターンに気づき愕然とすることになるのですが、Aさんは無自覚にお父さんのことを「理想の男性像」として求めていました。浮気をして、借金をして、家に帰れなくなって子供を捨てて黙って家を出て行ったお父さんを…。
女手ひとつで仕事と育児をしながら大学まで卒業させるといったお母さんの苦労をまったく省みることなく、一切養育費も払わなかった無責任で非情なお父さん。
自分のお父さんがそういう父親なのだという事実に向き合うことができず、あたかも「お父さんは理想の男性なのだ」となんとかして自分を納得させることで、幼いころに自分を捨てて去っていったお父さんへの怒りを抑圧してきたのです。
それと同時に、お父さんと離婚した母親への怒りもあるけれど、怒りをぶつけてしまうと自分の帰る居場所がなくなるため、その怒りもさまざまな理由を考えては否定し、抑圧してしまう…。結果、そうやって長い間抑圧してきた怒りは、親密になった男性に向けられて爆発していたのです。
むしろ、抑圧した怒りの発散を目的に、最初から爆発させるための材料を持っている人を選んで一緒になっているといっても言い過ぎではないと思えるくらい、毎回、同じパターンを繰り返していました。
でも、Aさん自身は、どうして自分ばかりこんな目に遭うのかまったくわからず、ただただ「私は男運が悪いようで…」とそれまで思っていました。
ましてや、この人間関係が破局するパターンが「神格化していたお父さんへの依存心」に端を発しているなどとは考えもしていなかったようです。
その後、Aさんは自分の無意識のパターンに気づき、そのパターンに介入することで、その後の夫婦関係は改善に向かっていきました。
このAさんの事例には、人間関係がいつもなぜか悩ましいものになってしまう人に共通するある典型的な特徴があります。それは何かというと…。