周囲から感じる「世代の変化」
周囲の20代を見ていると、情報に価値を置いたり、個々のアイデンティティを表現することを重要視する特徴を持つ世代だと思います。SNS上では、自分の写真を載せたり、社会問題について言及する人が増えたことなどが例としてあげられるでしょう。
黒人差別撤廃運動のBLM(ブラック・ライヴズ・マター)が世界的ニュースとなり始めたときは、ビリー・アイリッシュが政治に対して声をあげたことなどで、若者のアイコン的存在となりました。
mixiやCROOZblogが流行っていたころは、人との関わりを重視し、友達に向けた「内向き」な発信が主流でしたが、現在では政治や環境問題、ジェンダーの話題について「外向き」に発信する20代が増え、勉強をすることや、社会について考えること、自分の意見を持つ人がかっこいいとされる時代になった印象です。
「〜主義」という言葉が若者の口から自然と発せられるようになったのも、ここ数年の傾向で、未知より既知を好む若者は多いのです。
InstagramやTikTokで社会問題をときに挑発的に、ときにユーモアを交えながら発信できるのは、20代ならではのスタイル。「おしとやかで静かな女性」が好まれた時代に比べて、「一人でも生きていけるような自立した女性」が女性の理想像としてあげられるのも、世代の変化です。
「女として得している」はいいこと?
私は大学生のときの就職活動で、上の世代のかたたちと関わることが増え、自分がいかに女性として見られているかを実感し、違和感を覚えるようになりました。
若い女性としての商品を消費されているような感覚を覚え、その違和感を知り合いの社会人に伝えましたが、「若い女の子は可愛くしとけばいいんだよ〜」との一言。
結局、モヤモヤが解消されることはなく、大人と関わることや社会とつながることは、「仕方ない」で終わらせられることもあるのだと実感しました。
「女のほうが得」という言葉がありますが、たとえ自分の女性性を使って好かれたとしても、素直に得をしたと喜べませんでした。
女性専用車両や映画のレディース割引などでも、「女のほうが得をする」との声はよく聞きます。しかしこれらは痴漢被害対策のための女性専用車両や、男女の雇用や所得の格差を懸念してできたレディースデイなど、男性優位な社会で男性の持つ特権が行使されていることを前提でできたシステムなのです。「女のほうが得」という言葉の実態は、むしろ逆なのだと思います。
この「女のほうが得をしている」という考えは、差別がしたいのではなく、本当にそう思って発言している人が多いでしょう。それはいままでの環境や教育など、さまざまな状況で「男/女」の概念が定着しているからこそ生み出される考えです。
男女のらしさを抑圧するようなマーケットや発言はいまだに多くみられますし、若者世代でも「男/女なんだから」と無意識にらしさに縛られていることはあります。
私自身も料理ができないことに劣等感を抱くことがありますが、それは本来周りと同じように「女として」期待されていることができないからなのでしょう。らしさの脱却はそう簡単に実現することはないのかもしれません。