クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信しているHonoka Yamasakiです。
最近では、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、セックスなど、さまざまな社会問題に関心が向けられ、とくに恥じるべきだと考えられていた「性」について、オープンに語られる機会が増えました。ですが、まだまだ進んでいない「性」の問題もあります。
それは、性行為やキスを行うときにお互いが確認すべき「性的同意」。性犯罪の刑法改正を巡り、立憲民主党で2021年5月に開かれた立憲民主党の性犯罪刑法改正ワーキングチームの会合では、外部講師が性的同意年齢を現在の13歳から16歳に引き上げることを提案するなど、法改正を求める多くの声があがっています。
より一層問題視するべき話題として、「性的同意」についていま一度考えてみましょう。
被害者のほとんどが被害を訴えられない現状
体を重ねるだけでなく、キスやハグ、手をつなぐことを含む性行為。その際には、相手が積極的に性的な行為をすることを望んでいるのかを確認しなければなりません。
性犯罪被害に遭う理由として、「相手が露出した服を着るからだ」「相手がはっきりと断らなかったからだ」と被害者を責めるような意見をよく聞きます。ですが、そのときの服装や「No」と言わないこと、相手の家に行くことが、性行為を同意することにはなりません。
平成29年度の内閣府男女共同参画局の調査によると、56.1%もの被害者が「誰にも相談しなかった」と回答。望まない性行為を強制された被害者のなかでも、警察や両親に言わない人が半分以上を占めているのです。
半数以上もの被害者が周りに相談しない理由として、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」が多く、次に「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」と被害者が声をあげづらい環境があることがわかります。
被害が起こったときに守ってくれる法律や環境がないことは、泣き寝入りする人が増えるだけでなく、これからの被害件数を増加させることにつながるでしょう。
明治時代から変わらない性的同意年齢13歳の日本
いまもなお被害件数が絶えない理由として、「性的同意年齢」があげられます。性的同意年齢とは、性行為をするか否か自ら判断できる能力があるとみなされる年齢のことです。
日本の刑法上の性的同意年齢は13歳とされており、本人の同意の有無にかかわらず、12歳以下の人に性的な行為をすると罰せられます。
先ほど挙げた平成29年度の内閣府男女共同参画局の調査では、無理やりに性交等(性交、肛門性交又は口腔性交)された女性の被害件数も公表されていました。被害経験がある女性は7.8%、つまりおおよそ13人に1人の女性が被害にあっていることになります。回答したくない被害者を想定すると、さらに高い割合が予想できます。
被害にあった時期は、「20歳代」が 49.4%と最も多く、そのあとに「30歳代」(22.0%)、「18歳・19歳」(14.0%)、「小学生のとき」(12.2%)。統計からも、若い女性の被害件数が多いことがわかります(前同)。
日本の性的同意年齢は13歳。驚くべきことに、この法律は明治時代から変わっていません。他国の性的同意年齢とみてみると、アメリカ「16〜18歳」、イギリス・韓国・カナダ「16歳」、フランス・スウェーデン「15歳」、ドイツ・イタリア「14 歳」。
2020年に韓国は、未成年の児童を相手に性搾取映像を製作・配布した事件「n番部屋事件」が決定打となり、日本と同じ13歳から16歳に引き上げされました。
また、性的同意年齢が世界一低いフィリピンでも、12歳から16歳に引き上げる法案が2020年に可決。アジアの国でも、性的同意年齢引き上げの見直しがなされているなか、日本は遅れをとっています。